9月の大雪山→トムラウシ縦走 ~天を仰いで紅葉を眺める~
1日目はこっち
harimayatokubei.hatenablog.com
2日目。4時30分に起床。さみ~。こりゃ氷点下近くまで下がったな……。
朝食を食べて5時30分に出発。山肌を覆う雲の動きが早い。稜線だと相当吹いてそうです。ただ、所々では晴れ間らしき所もあり、全く悲観する天気ではなさそう。
稜線に出ると案の定の強風。高度感は全然無いので怖くは無いですが、気温の低さも相まってやや厳しいコンディションです。シンプルに寒いのです。
途中の五色岳で電波が入ったので天気を確認。どうやら昼過ぎからは晴れる模様。しかし私たちは今日中にトムラウシ温泉まで行くので、その晴れ間を待つ時間はありません。
休憩もそこそこに出発。吹きさらしの木道を黙々と進みます。
歩いても歩いても一面のガス。しかも強風。こりゃあ結構しんどいぞ。
晴れていれば化雲岳に行くのですがガスガスは明らかなのでパス。ヒサゴ沼分岐で小休憩。サラッと書いていますが、既にCT3時間、距離にして5㎞歩いています。
ほんの一瞬だけ太陽を感じてぬくい。
これまでは東西方向の稜線だったので西風はかろうじて遮られていましたが、ここからは南北方向なので西風をモロに食らいます。とても写真を撮る余裕は無く、黙々と進むのみ。ヒサゴ沼分岐から天沼あたりまでは、私の登山人生でも屈指の辛い局面でした。
日本庭園を通過。この辺りで本日最初の登山者とすれ違いました。
この辺りからガスが飛んで徐々にですが晴れ間が増えてきました。とはいえまだ1分に1回陽が差す程度でしかない。
木道が終わると今度は直径2mほどの巨岩が広がるロックガーデンに到着。
この登り中にまた晴れ間があり、すぐに終わるだろうと思っていたのですが、
終わらない。太陽が隠れない。
後ろを向くとつい5分前まで歩いていた道が見えます。
正面には未だに雲を纏っているトムラウシ山の姿が。しかし、私たちのいる所は完全に晴れました。
前後に広がる絶景。こういう瞬間があるから登山はやめられないんだなぁ。
ロックガーデンを超え100mほど登る久々の急登に取り付きます。風はまだ強いけれど太陽があるだけでこんなに心強いとは。
登り切った所で休憩。それにしても絶景である。大雪山は見えないけれど。
平坦地を少しだけ歩くといよいよトムラウシとご対面です。もうだいぶ近いので風格は感じないけれど、ここまでの道のりを考えたらもう感動してきた。
山頂へ最後の登り。近寄ると思いのほか岩が多く驚きです。もっと穏やかな山と思っていました。
10時30分、トムラウシ山登頂。
良かった。無事に着いた~~……。道中の辛さを考えると、無事に着いて本当にほっとしました。
山頂は連休なので結構賑わっています。みんなどこから来たんだろう。
天気は快晴。少し雲が残って大雪山は見えないけれどこれ以上の贅沢はいりません。
十勝岳も雲がかかっていますが、火山らしいダイナミックな地形を拝めます。
アルプスのような豪快な景色も良いのですが、このみたいな一見すると穏やかな景色も良い。というか私はこちらの方が好みです。
まだまだゴールは遠いのですが、余韻に浸っていると45分も経ってしまいました。距離的にはまだ半分です。気を引き締めて下山開始。
それにしても展望がいい……。
日本とは思えない壮大な景色にとにかく感動します。できるならずっとここを歩いていたい。
さて、トムラウシ分岐まで下ってきました。
山頂からここまではCT15分、ですがかかった時間は30分。あれ……ペース遅くないすか。
どうやら同行人の膝が壊れてきたらしい。んだよ根性無いなぁ~、と思ったものの、冷静に考えるとヤバいぞ。ここから下山口まではCT6時間。現在は12時前なのでこのペースだと下山に12時間かかって到着は日付を回ってしまう。食糧とヘッドライトはあるので遭難は無いと思うが……。
とにかく無理しない範囲で急ぎます。とはいえペースがゆっくりだからのんびり写真を撮る余裕はあるんですよね~。
12時40分、トムラウシ公園到着。ここから眺めるトムラウシ山は美しいし風格も感じられて素晴らしい。青空に紅葉、ハイマツ、雪渓のパッチワークのような景色が映えます。
「グムッ!グオオ……」といううめき声を上げながら岩場を下る友人氏。いや~一歩一歩が辛そう。この絶好の景色を痛みで邪魔されるのはかわいそうです。ちなみに彼の荷物の大半は私ともう一人のザックに移してます。
石狩岳やニペソツ山を眺めながらの快適道。
13時、前トム平到着。トムラウシ山を眺められるのはここが最後の模様です。
景色もハイマツから紅葉の樹林帯に変わっていく模様。友人氏の膝が非常にキツそうなので、ついにバファリン(痛み止め)を服用しました。あと8㎞。先は長い……。
それはさておき、この辺りの紅葉が神がかって素晴らしかった。
最早説明不要です。とにかく写真だけ見て欲しい。
青空と紅葉のコントラストがひたすら続いて全く飽きない。樹林帯は普段だと退屈ですが、紅葉の時期だけは歩いていて楽しいですねぇ。
一旦谷底まで降りてから150mほど登り返します。辛いが、思ったよりアッサリと登り切れました。
尾根線に上がってからも引き続き紅葉ロード。この世のものとは思えぬほど綺麗です。
途中からは木々の隙間よりニペソツ山が望めるようになります。
大分下ったにも関わらずこの展望。焦りもありつつ、しかし景色の良さには励まされます。
この辺りからぬかるみが続くとのことでしたが、秋口なのも相まってかさほどではありませんでした。
15時50分、カムイ天上という小広場に到着。山頂からはCT110%くらいで下ってこれました。
ゴールであるトムラウシ温泉までは5㎞でCT2時間。日没後になりそうですが、なんとか常識的な時間には下山できそうです。
標高が下がってきたので木々も青くなり、本州とさほど変わらない樹林帯を歩き続けます。
16時30分、温泉コース分岐に到着。
残り3.9km。陽がかなり傾いてきました。
なんとここで膝痛の友人が驚異的なスピード(CT50%弱)で歩き始めました。本人曰く「平坦なので楽」とのこと。確かにこれまでの下山路よりは緩やかですが、、、本当に大丈夫か?
まぁ本人がOKと言ってるのでOKなんだろう。早く下りたいのはこちらも同じなので猛スピードで最後の道を突き進みます。
最後の1㎞で200mを一気に下る。太陽は既に山の向こうに沈んだ。
おおっ、あれがゴールか!!
17時45分、ゴールであるトムラウシ温泉東大雪荘に到着です。なんとかヘッドライトを出す寸前に到着できました!よかった~。
ウゴゴゴ……足が痛ェ……。宿の外にある蛇口で靴を洗っている間にもどんどん暗くなり、到着から10分もすると完全に夜になりました。本当にギリギリだった。
宿の夕食にも間に合ったので一安心。チェックインして温泉を軽く浴びて待望の食事です!!
この山奥なのにこの豪華さ。海鮮まであってしかも美味いときたもんだ。正直あまりの疲労であまり覚えていません笑
この後は流石に何かする気も起きず、21時には就寝しました。
感想
しつこいほど「素晴らしい」「最高」と書いた通り、私の登山人生でも最も素晴らしい登山でした。私が急峻な山々よりも広大な景色の方が好きなのもありますが、旭岳~トムラウシにかけての山上とは思えない大平原は爽快さにおいて日本最高レベルだと思います。2日目は急速に天候が回復した点も、非常に思い出深い瞬間です。
しかしその危険性を認識したのも事実。身を隠す起伏が殆どない道が続くため、風雨が続けば、あの集団遭難を例に出すまでも無くハードな状況になったことでしょう。実際私たちも結構辛い場面はありましたから。
まぁ、その辺を差し置いても日本最高級の登山ルートなのは間違いありません。日程の余裕と確かな装備で挑めば、天国のようなトレイルを体感できるはずです。
おわり