9月中旬の利尻山 ~三度目の挑戦で山は微笑むか?~
利尻山(1721m)は日本最北の百名山であり、屋久島とともに離島にある百名山でもあります。
特筆するべきはその位置と展望。北海道の最北端近くに位置しており、周囲に高い山は一切存在しません。完璧な独立峰であるため晴れればサハリンまで見えるという超好展望が期待できます。同じ離島の百名山でも、重厚な山塊を形成する屋久島とは対照的です。
実はこの利尻山に2019年に登っていました。
が、結果は下の写真の通り。
見事にガスガス。
まぁガスったとはいえ一度登っているしもういいかな?と思ったのですが、やはり展望を諦めきれないので2020年9月、シルバーウィークを利用してもう一度行ってきました。
と、いう訳で旭川空港に到着。
利尻に行くには札幌から飛行機か、稚内からフェリーの2通りに大別されます。もちろん飛行機が最も早いのですが、高い。
なので今回は旭川空港からレンタカーで稚内入りしてフェリーで利尻へ、という選択肢を取りました。これが一番安くて自由度が高いと思います。
19時15分に旭川空港を出て、まずは稚内に予約した宿まで行きます。
旭川~稚内はおおよそ250㎞。これは東京~浜松に匹敵します。私は札幌~稚内の移動を4回やったことあるので相当遠いことは承知の上でスケジュールを組んだのですが、、、
う~ん、やっぱり長い!深夜の国道40号は車が殆どおらず終始爆走してなんとか0時に稚内に到着しました。
さて、今回は明日、明後日、明々後日と3日間利尻にアタックできる旅程を組んでいます。まずは明日登るかどうかの判断。ヤマテンによると「北海道は不安定な天気。利尻は時折晴れ間が見られるかもしれない」とのこと。
む~……実に微妙です。でも、チャンスがあるなら行ってもいいと判断。稚内を7時15分に出るフェリーで利尻に向かいます。
道北らしいスッキリ爽やかな天気です。どうかこのまま晴れてくれ。
船は結構な混み具合でしたが、適当に横になってうたた寝している間に利尻島はすぐ近くになっていました。
8時55分に利尻鴛泊港到着。稚内はスッキリ晴れていたんですが、ここは微妙な天気。でも雨は降らなさそうなので突撃します。
タクシーで北鹿野営場(220m)に移動していざ登山開始。
6合目あたりまでは晴れていたのですが、
徐々にガスり始めて山頂もガスガス……。
どうしても諦めきれなくて2時間も山頂で粘ったのですが、軽い晴れ間すら無く絶望的と判断して泣く泣く下山しました。
うわー、下山したら晴れてるし……なんなんだ一体。
下山したタイミングで明日の天気予報を確認。「引き続き不安定な天気だが、山頂付近は陽が差す時間がある見込み」とのこと。
今日と同じやんけ~~!と思いましたが、今日よりは好転しそうなので一か八か明日も登ってみることにしました。
と、いう訳で利尻の宿で一泊。ペンション群林風さんです。
ごく普通に晴れている鴛泊の市街地。明日は頼むぞ……。
夕食は居酒屋で一杯。やはり北海道は食事のレベルが非常に高い。素晴らしいですね。
寝不足気味だったので8時には就寝しました。
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そして4時30分に起床。いよいよ利尻山3度目の登山の日です。
準備を終えて宿から眺めると……むむっ、山頂が見えているではないか!
でも喜んではいられません。山頂は1500mも上なのです。着いた時どうなるかは未確定。
宿のマイクロバスに乗って昨日と同じ北麓野営場に到着しました。
流石に三度目ともなるといい加減見慣れてきたなぁ。自販機に何を売っているかまで分かります。
準備を終えて5時15分に出発。
甘露泉水を通過してしばらくは樹林帯を進みます。
5時41分に4合目。
6時5分に五合目通過。昨日の疲れが残っており既にやや辛い状況です。
6時23分に6合目(標高700m)に到着。この辺で森林限界を抜けます。
礼文島も眺められる素晴らしい好天。このまま、どうかこのまま……。
6合目から先は胸突き八丁という急坂になります。ここらで標高1000m突破。
7時30分に8合目長官山に到着。
まだ北海道本土が見える天気ですが……上が雲に覆われ始めました。
くっ……いや、でも長官山で空が見えたのは今回が始めてのこと。確実に天気は上向いているはず……。
と思いましたが、長官山を過ぎると完全にガスに覆われました。
7時40分に利尻山避難小屋に到着。
中は20人くらいは滞在できそうな広さです。綺麗さはまぁまぁ。
ここで気象レーダーを見たところ、利尻山全域を積乱雲が通過しそうな事が分かりました。そのため雲が通り過ぎるまで待機。まぁ、ここで上に行ってもどうせガスるだけです。
1時間ほど待機したら雨は止み、徐々に雲に切れ目が出てきたので再出発します。
とはいえ基本的にはガスガス。
9時に9合目到着。ここからは土ではなく礫が散らばる道になります。
9時30分に沓形コースとの分岐に到着。ガスりっぱなしで展望は無し。
この辺からは特に崩落が激しくなります。必死の補修工事が実施されているけれど、どこまで崩落が止まるかは不明。
ここらを歩いていると、突然ファーっと光が強くなりました。
が、5秒もすると再び深いガスの中に……。期待を持たせるのが上手い山ですこと。
濃いガスに覆われていますが、流石に三度目の登山なのでもう少しで山頂なのは分かります。
そして9時45分、利尻山(1718m)に登頂。昨日も来たので感慨はありません。
やはり展望は無いのですが、はじめてローソク岩を見ることができました。せいぜい100mくらいなのですが、過去二回では見れなかったんです。
さて……今回は晴れ間を見込んでじっくりと腰を据えて待機します。風は無く気温も10℃くらいはあるのであまり寒くはありません。
中々晴れないまま45分経過。時折光が濃くなる瞬間もあるのですが、晴れには至らない感じ。
更に30分経過。もう山頂に着いて1時間15分です。電波は入るので暇つぶしはできますが、流石にちょっと寒くなってきましたね……。
そろそろ諦めるしかないか。と思い始めた次の瞬間でした。
ん……!?
は、初めて山頂から青空が見えたぞ!?
おおおっ、これは来るのか?
晴れろ。晴れろっ。
晴れた。
やったー!!晴れたぞ!!遂に晴れた!!!
嘘だろ。マジかよ。信じられん。あんなにガスガスだったのに。
1時間半も粘った甲斐があった。三回も足を運んだ甲斐があった!
沓形方面の稜線も見えます。涙が出るほど素晴らしく豪快です。
雲間に見える1700m下の海岸線が神々しい。とにかく恐ろしいまでの高度感です。
いやしかし、この景色を見れただけでも、連休を使って極北のこの地に来た甲斐があります。実に、実に素晴らしい……。
絶景に浸っていると再び雲がもくもく湧いてきて山頂はガスに包まれました。
せいぜい2分程度の晴れ間、それも南西方面120°くらいが開けただけですが、とにかく素晴らしかった。雲間に見え隠れする稜線と海の光景は、一生忘れられないと思います。多分。
この後も30分ほど待ったものの、晴れる気配が無くなったので11時45分に下山を開始します。
12時10分に9合目到着。登りではガスガスでしたがわずかに展望が開けていますね。
上はどうかと思い振り返ると相変わらずのガス。晴れていたら再度登頂しようかとも思ったのですが…。
まぁそれはそれとして、ここから下は視界が開けたので、利尻の海岸線を眺めながら下山します。まさに絶景。
避難小屋を過ぎて長官山へ。利尻山で唯一の稜線歩きっぽい場所ですね。
12時30分に長官山到着。山頂は相変わらずガスの中です。
ですがやはり下は良い景色。礼文島も見え始めました。
13時17分に第一展望台に到着。大分高度感も薄くなってきましたね。
ちなみにここから北東を見ると礼文島でも北海道でもない陸地がうっすらと見えています。
本当にうっすらですが、多分あれはサハリン……。海外が見える百名山もここくらいでしょう。
樹林帯に入ってからも木々の間から爽やかな青空が見えます。
14時15分、甘露泉水に到着。
そして14時23分に登山口に戻ってきました。
ここからは宿の迎えで一旦宿に戻って荷物を回収してからフェリーターミナルに向かいます。
帰りの船は16時40分なので風呂に入る余裕は無いですね。
16時頃に綺麗な鴛泊フェリーターミナルに到着。結局利尻山は最後まで山頂がガスに覆われていました。
稚内行きのフェリーより利尻山を望みます。
利尻山はやはり掛なしに素晴らしい山です。遥か遠方からも分かる整った山容、山頂からの圧倒的な展望はもとより、日本最北端にあるという旅情もあります。私はまだ50座程度しか登っていませんが、今のところ日本で一番好きな山です。
……19歳の頃、道北を原付でツーリングした際、原野の遥か遠くに利尻山が見えました。
今思えば、この山に三回登ったのもその時の憧れが原動力になっている気もします。
まぁ……今回は遂に展望が見れたとはいえ、満足するにはちょっと微妙なラインである事は確かですね~。基本的にはガスっていたので。もしかしたら2021年に再リベンジもあるかもしれません。Gotoが続いていればいいんですが。
おわり
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おまけ
翌日は稚内周辺を観光しつつ旭川まで戻ります。
まずは宗谷岬へ。実はここに来るのは5回目です。
折角の稚内だし海鮮丼でも、という事で港で2000円の海鮮丼を摂取。当然のように美味い。
そしてオロロンラインを南下します。
いや~~もう最高ですね。車も良いのですが、バイクだとマジでもうびっくりするぐらい最高です。昔ツーリングした時は「すげ~~~~~」と声を上げながら走っていました。
ちなみに利尻山は今日はこの通り。すごい荒れてそう。
その後も日本海沿いを淡々と南下します。
途中でちょっと寄り道。
こ、ここは……?
ヒ、ヒグマ!?
そう、ここはあの伝説の羆事件である三毛別羆事件の再現地です!
ちなみに、当時の集落は完全に森に呑まれてしまっています。
今の再現地は本当の現場からちょっと離れた場所にある、あくまで再現地ですね。
離れているとはいえ、再現地ですら鬱蒼とした森の中にあり、こんな所に集落があったとはとても信じられません。それに当時の家の貧弱なことと言ったらひどいものです。藁と枝でできており、ヒグマどころか人でも軽く倒せそうな感じ。
これで開拓していたというのは凄い根性だなぁ……と、羆事件とは別の方向で感心しました。
その後も日本海沿いを南下していきます。留萌の北あたりで夕陽が見えたので折角だし路肩の駐車場に停まってみました。
丘に向かって階段が伸びていたので上がってみると、視界が開けて非常に気持ちが良い。
透き通るような空気感が実に北海道らしいですね。
夕陽を見届けてから夜7時には旭川に到着して翌日東京に戻りました。
2021年にもまた行くかどうかは……まだ未定です。
おわり