転がる五円玉 ~旅と城と山~

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皇海山クラシックルート日帰り ~GWの深緑と共に~

地味百名山の最高峰と噂される山、皇海山。世の中の評判といえば「ひたすら地味」「ひたすら長い」「ひたすらヤブい」「それでいて展望は無い」という散々なものです。

まぁでも百名山完登を目指すには避けては通れぬ山。今回は残雪が残るGW後半にクラシックルートを歩きました。

 

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 銀山平 3時30分

庚申山荘 5時30分

  鋸山 8時00分

 皇海山 9時15分

  鋸山 10時30分

庚申山荘 13時30分

 銀山平 15時10分 

合計11時間20分(コースタイム14時間30分)

 

夜中0時に銀山平の駐車場に到着。さて仮眠を取るか、と思ったら思ったより寒い。GW後半だからと完全に油断していました。

満足に寝れず朦朧としながらも3時30分に銀山平出発。林道は深い闇に包まれています。

明るくなった頃に一の鳥居到着。さーて、登りますか。

深緑が美しい森の中を淡々と歩きます。こういう長い山は焦らず淡々と歩くのが鉄則ですね。

1時間ほども歩いて庚申山荘到着です。目の前に庚申山の稜線が広がりテンション上げ上げ。

ちなみにまだ誰とも出会っていません。

静かな5月の森は雰囲気最高。もうちょっと浸りたかったけど今日の行程はまだまだ長い。小休止して出発、庚申山へ行きます。

うーむ、すごい!岩岩アンド岩!!修行の山として有名なだけあって岩の迫力が半端ではない。

途中明らかに土砂崩れがあった場所も通りました。変な踏み跡を歩いてプチ道迷いも発生。細かい梯子や鎖場も多く割と緊張感があります。

激斜が終わると平坦になり庚申山到着。いやこれまた地味だな!

特色のない樹林帯が続くのでちょっと飽きてきました。

が、山頂から10歩ほど歩くと突如として視界が開け、青空と皇海山が見えたのです。

思わず「うおーっ」と声が出ましたね。展望地がある予兆など微塵も無く、いきなり視界が開けました。三時間近く展望がない道を歩き続けたのでこれは嬉しい。

皇海山の丸みを帯びた重厚感ある山容が素晴らしい!風も穏やかでこれは良い登山になりそうだぞ!!

・・・と、テンションを上げたのですが、この登山で最も興奮したのはここでした泣。

難所と名高い稜線に突入です。

 

しばらくはごく普通のマイナー山という感じ。楽しい。

しかし終盤の岩場を見て絶句。どこ歩くんだこれ!?下の画像の左下あたりをよく見ると梯子があるのが分かります。どうやらあそこを登るらしい。

その梯子への取りつき部。落ちたら終わりな岩盤をトラバースします。怖い!!

そしてここからがもっともヤバい地帯。ほぼ垂直の岩場が連続します。鎖も古びており、ロープはただの虎ロープです笑。とても写真を撮る余裕は無く上から一枚だけ撮影しました。

ちなみにこの辺はアップダウンも多く体力も結構消耗します。まだ皇海山に着いてもいないのに泣

鎖場を乗り越えて鋸山到着。結構な緊張感がありました。

ここで他の登山者と初めて遭遇。どうやら既に皇海山に登って今から下山のようです。庚申山荘宿泊したのかな?

鋸山は目の前の皇海山の他、日光白根山なども見える展望地ですが、時間が惜しいのですぐに出発。

 

まず100m近くの激斜を下ります。ここがもう無茶苦茶怖い。夏だったらなんてこと無さそうですが、残雪期なので滑る滑る。端の木や根っこにしがみついて慎重に降ります。

転がるように降りて不動沢のコル到着。ここはかつての沼田ルートとの合流点です。電波もちょっと通じます。

皇海山への最後登り。うーむ、残雪がすごいな。迷いそう。踏み跡を辿って尾根伝いに登っていきます。

そして遂に皇海山山頂に到達。9時15分なので出発から6時間近く経ってますね。長かったぁ。

とにかく静かです。展望もほとんどなく恐ろしく地味。でもまぁこういう雰囲気は嫌いではありません。(でも、6時間かけてこの景色はちょっと納得いかない!)

昼飯がてら休憩します。ここはのんびり20分近く休憩しました。電波も地味に入ります。

 

気合いを再注入して出発。まずは正面に見える鋸山へ登り返します。

往路で苦労した激坂を登ります。アイゼンが欲しいよ〜。

鋸山着。通過します。

六林班峠へは気持ちのいい稜線です。景色もあって最高!

が、しかし10分ほどで最高時間は終わり薮が始まりました。oh……。

道迷いしない程度のギリギリな薮さです。単独だとちょっと怖いかも。まだGWなので気温も低く虫もいないのが幸いですね。これが夏場だったら地獄だっただろうな。

まだかまだかと思っていたらようやく六林班峠に到着。

ここからが皇海山の裏名物(?)トラバース道です。山と高原地図のコースタイムをどうやっても割れない魔のロング区間となります。

コースタイム割れないのが分かってるならのんびり歩けばいいや。1人だし。

草木が芽吹く直前の気持ちのいい森を淡々と歩きます。普段の8割くらいの速度で歩くので全然疲れない。

途中で山桜を眺めたりしつつ殆ど散歩みたいな感じで歩みを進めます。

終盤で天下の見晴らしという展望台があったのですが往復20分かかるのでカット。

庚申山荘到着。や〜長かったなァ。難所はほぼ終わったので今日初めてのんびり休憩です。

しかし絵になる山荘やな。眺めは無さそうだけど広葉樹に囲まれた雰囲気がすごくいい。スルーするのが惜しいレベルですね。

おにぎり食べて下山へ。この辺には〇〇丁目と刻まれた江戸時代の石碑が点在しています。地獄の三丁目感を感じるのは私だけ??

登山道の終わり付近にある行きはスルーした庚申七滝を見物。まぁまぁすごい。ルートから近いしこれは見てよかった。

新緑眩しい一の鳥居を通過。この時期の山は降りると季節の移ろいを感じていいですね。

林道を歩いて歩いて………歩いて。長いッッ!この区間はマジで長い!終盤は電波が通じたので歩きスマホで暇を潰しながら歩きました。

そして駐車場着。

GW真っ只中の好天日でこの台数か〜少ないなぁ。ま、なにはともあれ無事に戻って来れてよかった。

 

感想

結論から言うと、思ったよりも良かったです。特に六林班峠からのトラバース区間が良かったですね。一般的には変わり映えしなくて退屈とされる区間で、実際にもそうでしたが、春の穏やかな森を自分のペースで歩きたいだけ歩く時間はとても心地よかったです。登山本来の楽しみとでも言うのかな、眺望至上主義者の私ですが、考えを改めるくらいには良かったですね。

あとはこのロングコースを余裕を持って歩き切れたのはかなりの自信になりました。もっとヘロヘロになると思ってたんですよね。幌尻岳の時のような感じで。

普段のコースタイム7割よりも遅いコースタイム9割を目標に歩いたからだと思います。この経験はテント泊とかする時に参考になりそうです。

百名山じゃなけりゃ一生行かなかったであろう皇海山。アルプスとは違う体験ができて非常に有意義でした。でも、もう一回行くかと言われれば行かないよなぁ〜。せめて一の鳥居まで車で行ければ……

 

おわり

1泊2日中央アルプス縦走 2日目:長い!長いぞ中央アルプス!!

朝4時30分に起床。

外を見ると……濃霧&強風!なんてこった、、、ロープウェイでエスケープかも?と覚悟しつつ準備をします。

5時15分。小屋の前で日の出を待っていると、徐々に空が白んできました。これは来るか?来るのか??

きたあああああああああ!!太陽が雲を吹き飛ばしてくれました!快晴です!

つい10分前までガスガスだったとは思えないほどのド快晴。これはもう行くしかないでしょう。中央アルプス縦走の開始です!

5時30分から行動開始。早速、宝剣岳に向かいます。地図では破線になっている難ルートで最初から緊張感が高まる。

うおお、ゴリゴリの岩場だ。長いし、高度感もそこそこあります。ただ、掴む場所は多いので難易度は高くなさそう。

スイスイ岩場を登っていると、宝剣岳山頂に着きました。えっ、もう到着!?山荘から10分も経っていません。案外あっけないな。

頂上からは今日歩く稜線が見渡せます。こうして見ると空木岳はものすごく遠いですね……。不安になってきたぞ。

正面には千畳敷カールと南アルプス全山、そして富士山も見えています。この光景だけでも今日登った甲斐があった。素晴らしい!

時間が惜しいので先を急ぎます。宝剣岳の南側もゴリゴリの岩場で、特に左右が崖のナイフリッジは高度感もあり緊張しました。

が、全体的には下りやすく20分ほどで三ノ沢分岐に到着。予想よりちょろかったですが、北アルプスと違って初心者も来やすい場所なので注意喚起で破線になっているのでしょう。

振り返ると宝剣岳が見えます。日陰側が急斜面になっていることがよく分かります。これは落ちたら助からない。

休憩もそこそこに出発(午前6時)。遥か遠くの空木岳を眺めながらの淡々とした歩行です。

8月下旬なので気温は結構高いものの、風が強めなので割と涼しいです。恐怖を感じるほどの風速ではないのでありがたい限り。

8時ちょうどに檜尾山に着きました。サラッと書いていますが途中で200m近い登り返しが2回あったせいで割と達成感あります。このコースはガッツリ目の登り返しが連続するので辛い……。

西側には檜尾避難小屋と南アルプスが見えています。本当に天気良い日です。来て良かった。

南には目指すべき空木岳が見えていますが、手前の稜線のアップダウンを見てゲンナリ。まぁここまで来たら行くしかない。

奥の山に雲がかかってるのが気になる。急がねば。

道中の稜線には穏やかではない箇所も結構あります。熊沢岳手前の岩場は結構な高さでした。

しかも登山道が全体的に怪しい。幌尻岳ほどではありませんが、ハイマツに隠れ気味で歩きにくいです。

10時20分、檜尾山から2時間ジャストで東川岳に到着しました。コースタイムは3時間20分なので6割ちょうどです。

カンカン照りですが、風のおかげで体力の消耗は少なく抑えられています。本当に風の冷却効果に助けられている。

この東川岳からは谷越に空木岳を望みます。すごい迫力。道中からだと稜線の向こうの大きな山、くらいにしか見えませんでしたが、ここからは圧倒的な貫禄があります。

これぞまさに百名山という姿を目の当たりにしてテンションアップ。まずは木曽殿山荘まで200mほど急斜面を降ります。

10時45分、木曽殿山荘に到着。空木岳までの道中では唯一の有人山小屋です。

風が吹き抜けて超涼しい。トイレをして出発。

さぁここからは最後の登り。350mを登り切れば空木岳山頂です。

しかし風が強くなってきた。南風なので南に進んでいる間は気にならなかったのですが、この稜線は東向きなので横から強風が当たります。更に風下は崖です。危険箇所はないものの精神が休まらない時間が続きます。

急斜面を登り切っても山頂はまだ。

うーむ、岩場が結構ガッツリしてるぞ。高度感もそこそこあるし、難易度も高めです。宝剣岳に匹敵するかも。空木岳に岩場の印象は無かったので驚きです。

が、ここを越えれば流石にもう近い。11時45分、空木岳登頂しました。

見よ、この快晴を!空木岳の名に相応しい空を!

来て良かった~~~~!!かなり疲れていますが、この景色を見たら疲れも吹き飛びます。北には歩いてきた中央アルプスを一望できるし、

東には伊那谷南アルプスが一望できます。この爽快感あふれる大展望は流石の一言。日本百名山に相応しい光景です。

いや~、、、感動した。さて、昼飯でも食べようかな、と思ったのですが山頂は意外と座れそうな岩が少ない。風も強くて落ち着かないのでちょっと下の駒峰ヒュッテまで降ります。

100mほどの距離なのですぐに到着。小さめですが、非常に眺めの良さそうな小屋です。

しかも、ここのベンチが凄い。崖に張り出すようになっており中央アルプスを一望できます。下が崖なので高度感だけなら空木岳山頂よりあるかも!?

しかも風が強い!谷から猛烈な勢いで風が吹きあがってきます。風を避けるために来たのに泣。でも景色は良いのでゴミが飛ばないよう注意しながら昼食を食べました。

 

13時ちょうどに駒峰ヒュッテ出発。あとはもう下るだけですが、この下りが長いのです。標高差は2000m、距離は10㎞。文字だけでも恐ろしいほどの下りです。しかも殆ど樹林帯らしい。覚悟を決めて歩き出します。

小屋からすぐの駒石あたりまでは爽快な稜線歩きです。

が、標高2600mあたりからハイマツに吞まれはじめた。木曾駒ケ岳ともこれでお別れです。



始まったぞ……長い長い樹林帯が。



14時に迷い尾根到着。まだ400mしか下ってないだと……!?



しかもここからが大変だった。鎖場やナイフリッジ、滑ったら終わりのトラバース道などの難路が連発します。樹林帯だから地味ですが、結構な危険路です。

そんな難路も越えて15時にマセナギ到着。まだまだ標高2000mですが、気温は高くなっておりしんどさが増してきました。

上を眺めると爽やかな天気なのですがね、、、

黙々と歩いて16時にタカウチ場到着。辛い……もう無だ。無。無で歩かなきゃやってられない。

16時15分に林道終点に到着。まだ400m近く下りがありますが、足が限界に近い。

単に疲れただけでなく足が痛すぎて激痛になっています。一歩ごとにうめき声が出る始末。最後は急坂なのも痛みに拍車をかけます。

そして17時ちょうど、遂に駐車場に着きました。

おっ、、、、おっほぉ……。疲れたし、足いってぇ……。これはマジできつい。



体力的には余力あるのですが、足がおそろしく痛い。合計3000m近い下りで足が完全にイカれました。怪我をしてない事だけが幸いです。

車に乗って恒例の温泉へ。近くのこぶしの湯に行ったのですが、キャンプ場の客で場内満員!シャワーすら待つ状況に驚きました。あんまりコロナは気にしない方ですが、これはそういうレベルではなく不快です。

それでもなんだかんだ言って温泉に浸かれば足の痛みも取れました。帰りは高速を使って22時に京都着。いやはや、疲れた1日だった。

 

感想

非常に歩きごたえのある縦走でした。稜線部は常に展望もあって爽快だし岩場も緩急があり飽きなかったのですが、下山路が長いこと長いこと。展望が開けるところが一か所も無いのはメンタルにきました。

空木岳は地味100名山の印象でしたがとんでもない。東川岳からの天を突くような山容はまさしく100名山に相応しい貫禄でした。眺望も文句無しです。南アルプスの向こうから頭を覗かせる富士山の姿は、朝陽が登るかのような清々しい光景でした。

 

おわり