転がる五円玉 ~旅と城と山~

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冬のハンガリー温泉旅 その16 ~ジャームベーグの美しき廃墟~

朝6時に起床。4日間泊まったアパートともお別れです。鍵はキーボックスに仕舞って、陽も登った朝8時頃にアパートを出ました。

実は今日がブダペスト最後の日です!明日の朝には飛行機で日本に帰るのみ。

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市電でドナウ川を渡ってブダ側に移動。
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橋を渡るとハンガリーで最後に泊まるホテルが見えてきました。

タヌビウス・ホテル・ゲッレールト。見ての通り老舗の名門ホテルです。最後の1泊はちょっと贅沢しちゃいますよ~。
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とはいえまだ朝なのでチェックインはできません。荷物だけを置いてまずは朝飯を食べに行きます。

ホテルの目の前にはリバティー橋があります。鎖橋より知名度は低いですが、優美な鉄骨と市電の景色がなんともいえず良い雰囲気の橋です。

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その橋を渡ってすぐの所にあるのが、このブダペスト中央市場。
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中はこんな感じ。肉屋や八百屋もあり確かに市場なのですが、土産物屋も多くあります。観光地化しつつも地元の台所にもなっている感じ。
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こういう市場には大体安くて美味い食堂があるものです。ここも2階に食堂があったので入ってみました。
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グヤーシュとアップルパイで1000フォリント(≒400円)。グヤーシュは「ハンガリーの味噌汁」と形容されるほど必ず見る料理です。安くてうまいのでオススメ。

 

さて、腹ごしらえをしたのでちょっとだけ遠出します。まず行くのは廃墟の教会。あまりガイドブックにも載っていない場所です。
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市電で市内の南西に向かい、着いたのはブダペスト・ケレンフェルド駅。ブダペスト市南にあるターミナル駅ですが、その割に駅舎がボロいのはご愛敬。
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ここから路線バスに乗ってジャームベーグという町まで行きます。
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バスチケットは自動販売機で購入。

さてバスはいるかな……と思ったら、、、もういた!!慌てて乗るとすぐに発車しました。あぶないあぶない。
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ジャームベーグまでの行程は全部googlemapで調べました。ブダペスト市からは30km、40分くらいで行けるようです。

ちなみにケレンフェルド駅前にはブダペスト発ウィーン行きやパリ行きの長距離バスも停まっていました。さすがヨーロッパ。長距離バスの規模が違います。

 

ブダペスト郊外を淡々と走って10時ちょうどくらいにジャームベーグに到着。

農村地帯にあるごくごく普通の田舎町です。
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地図を見ながら歩いていると……見えてきました。あれが廃墟の教会「プレモントル修道院教会跡」です。
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どうやら丘の上に建っているらしく遠くからでも目立ちます。

 

テクテク歩いて5分ほどで教会跡の入口に着きました。チケット売り場らしき場所には1人800フォリント、と書いてありますが誰もいないのでスルーします。ラッキー。

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まぁそんなことはともかく、廃墟の教会を見ましょう。
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いーやこれはすごい。立派な教会の屋根が崩壊して完全な廃墟になっています。完全にダークソウルの世界観じゃん……。ちょっと感動です。
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この教会は1234年ころに完成。その後は長らく修道院として機能しましたが1736年の地震によって完全に崩壊してからは放置されて今に至ります。

ロマネスク様式の特徴であるロンバルディア帯がある一方で、ゴシック様式の特徴でもあるバラ窓みたいな円形の窓もあります。このようにロマネスクとゴシックの様式が混在している事もこの建築の特徴です。全体的なイメージはロマネスクなんですけどね。
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後期ロマネスク様式とゴシック様式が混在している点はwikipediaでも指摘されています。

この教会と完成時期が近いパリのノートルダム大聖堂もゴシック建築ながらロマネスク建築の要素を残していますので、この教会もロマネスク→ゴシックの過渡期にある教会といえるでしょう。

 

※この辺のバラ窓の変遷については以下のサイトに詳しいです。

asait.world.coocan.jp

 

さて、中に入ってみます。

まぁ中とはいっても屋根は見事に崩壊しており青空が見えています。
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地震によって崩壊した石材は地元住民が持っていき家の資材などにしたそうです。このため廃墟にありがちな残骸は全く転がっていません。

柱は単純ながらも束ね柱になってますね。これはゴシックの特徴ですね。

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内から正面を眺めます。ん~、やはりこうしてみると窓の少なさと柱ではなく壁で建物を支えているあたりがロマネスクなんですよね……。

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バラ窓も一部の枠組みを残して崩壊しています。壊れた窓から差し込む光がエモい。
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壁の厚さは1m近くあるでしょうか。非常にぶ厚いですね。

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正面玄関に入ってみました。ここだけ屋根が残っています。
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壁の石は黒く焼け焦げています。もしかすると、地震の時に火災も発生したのかもしれません。

 

リブヴォールトの天井は見ての通りコンクリートで補強されています。おそらく最近の補修でしょう。
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次に正面右手の身廊に行ってみました。左手は完全に崩壊していましたが、こちらはアーチや壁もよく残っています。
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こちらもレンガで所々が補修されています。この補修が地震崩壊以前のものか、20世紀にハンガリー文化省が実施したものかは定かではありません。
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右手外から眺めてみると、こちらは壁が割と残っていることが分かります。廃墟とは思えないくらいに。
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ここの後陣なんかはほぼ完璧に残っていますね。クローバーのようなロンバルディア帯が実に中世的で素晴らしい。この素朴な飾り気のなさから中世人の槌音が聞こえてくるようです。
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脇から正面にある鐘楼を見ます。全部で5階建ての様子。一番下だけは正円の窓(オルクス)になっています。
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この辺りの壁には歴史的建造物であることを示す名盤が埋め込まれていました。この名盤はおそらく20世紀のものなので、レンガの補修も全て20世紀になされたものかもしれません。
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回り込んで西側から1枚。全体が撮れるけれど逆光なのが残念。
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反対から撮ればいいじゃん、と思うかもしれませんが、この教会は丘のへりに建っているため正面と東側からはまともに全体像が撮れないのです。上にある鐘楼の写真もフェンスギリギリで撮っていました。

 

ちなみに教会の脇には謎の資料館のようなものがあり、発掘された残骸が展示されています。
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この残骸の他には19世紀の写真・スケッチがありますが、あまり目ぼしいものは無かったですね。
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まぁ資料館の中にいるよりは、外で教会を眺めていた方が気分がいいです。

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天気も良いし猫もいるしでしばらく資料館の外でまったりしていると、謎のおばさんから「Pay money!」と声を掛けられました。どうやらチケット売り場の係員が返ってきた様子。こういう事は海外のマイナー観光地だとあるあるですね。入場料はしっかり払いました。

 

さてと、そろそろ昼になるのでブダペストに戻りますか。どうやらジャームベーグにはレストランも無いようですしね。

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それにしてもこの教会の廃墟は実に素晴らしかった。

まるでゲームの中に入ったかのような世界を体感できます。草むらに残る石造りの教会がここまで雰囲気があるとは。思わず廃墟にはまってしまいそうなほど魅力的でした。建築としても実に興味深い。

ブダペストから1時間はかかりますが、来ても損はない所です。今思うとハンガリーで一番感動したのはこの建物だったかもしれません。

 

満足して丘を下り、バス停に帰ってきました。
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こうして見ると町の中心から廃墟の教会は結構遠いですね。教会が放棄された理由は「町の中心に別の教会が建てられたから」とwikipediaにありますが、それも納得です。

 

同じくバスを使って12時頃にブダペストに帰ってきました。郊外とはいえブダペストから20km程度なのでサクッと戻ってこれます。

さて次はブダペスト市内にあるローマの遺跡に行ってみましょう。

 

つづく

harimayatokubei.hatenablog.com

 

今回訪れた所

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