冬のハンガリー温泉旅 その15 ~聖イシュトバーン大聖堂と美しい夕暮れ~
ドハーニ街から徒歩5分ほど歩くと、巨大な教会の後ろ姿が見えてきました。
これは聖イシュトバーン大聖堂です。国会議事堂と同じ高さ96mの大聖堂で、ブダペストで最も高い建物です。
大理石の白い壁と高いドームを持つ新古典様式で、写真だと伝わりにくいですが結構大きい。
ちなみに、教会前の広場ではクリスマスマーケットが本日まで開催されていました。私もちょっとした人形を購入。
写真を見ればわかるように、まだ午後3時前なのに夕暮れの雰囲気になっています。ヨーロッパ各地で開催されるクリスマスマーケットは、陰鬱な冬を少しでも盛り上げようという気持ちがあるのかもしれませんね。
さて、正面から入場します。門も高ければ円柱も太い。さすがは国を代表する大聖堂です。
どうやらドームに登れるようなので、聖堂内部は後にして先にドームへ登ってみます。200フォリントで入場。
わあ~螺旋階段がぐるぐるしています。全部で364段あるらしい。
他の観光客と一緒にぐるぐる登っていきます。364段もあるとはいえあまり辛くはありません。
登り切ったら屋根裏に到着。大聖堂の外側は大理石で美しいですが、躯体自体はレンガ造りのようですね。
途中から金属の階段となりました。大聖堂で金属階段というのも意外な感じですが、実は1905年完成なので使える場所には金属を使っているのでしょう。
ドームの中に到達しました。下にあるのは内側のドーム、上には外側のドームがあります。
このようなドームは二重ドームと呼ばれ、重量の分散や役割の区別(内ドームは豪華に、外ドームは高く)で利用される工法です。この大聖堂では外ドームを高くしたいので二重ドームにしたのでしょう。
ここから外に出られます。
案の定の大混雑。ベランダの幅が1mほどしかないので押し合いへし合いしています。自撮りする人はベランダから身を乗り出して撮っているので見ているこっちがハラハラ。そこまでして自撮り撮りたいのか?
それはそうと、ブダペストで最も高い建物なので眺めは大変良好です。西にはクリスマスマーケットが解されている広場と王宮の丘が見えます。
北には国会議事堂も見えています。
北を眺めると、「東欧のパリ」と呼ばれるブダペスト市街が一望できます。
こうして眺めると、丘があるブダに対してペストが平坦な地形であることがよく分かります。地平線すら見えそうなくらいに平坦です。
ちなみに、左右にある鐘楼の鐘は重さ9トンもありハンガリー最大だそうです。
実は戦前は8トンの鐘があったようなのですが、第二次世界大戦時に軍事供用されてしまい、今のは2代目です。日本の金属供出のような事がハンガリーでもあったというのは驚き。
5分ほどで一周したので下ります。
再び階段をぐるぐる。登りとは違う場所の階段です。
階段を降り切ったらそのまま大聖堂内部に着きました。
※ここからの写真については、私の写真よりGoogleMapの方がはるかに分かりやすいですので、こちらを参考にした方がいいかと思います。
※↓こちらも昨日の写真。
この大聖堂に入ってまず思うことは西欧的な立派さであることです。
マーチャーシュ教会のようなハンガリーらしい装飾は少なく、白い大理石とモザイク画を中心にした西欧の教会らしい装飾が多いですね。全体的にはローマのバチカンに似ている内装です。
円頭やエンタブラチュアが金で塗装されているあたりだけが実にハンガリー的です。ですが、全体としてはやはり西洋風の雰囲気ですね。
さて、まずは入って右側から回ってみます。
右の翼廊の祭壇には、「王冠と聖剣を誰に託すか、聖母マリアにお伺いを立てる聖イシュトバーン」の絵が飾られています。
暗くて分かりにくいのですが、この祭壇の前に建物の模型のようなものがあるのが分かりますか?実はあの中に「聖イシュトバーンの右手」の不朽体があるのです。
しかし、人が、人が多い!さすがは聖人の右手。大混雑です。5分ほど粘ったのですが、泣く泣く撤退しました。まぁ見たから別にどういったことはないと思うんですが、観光客としてこういうのは見ておきたかったですねぇ……。
ちなみに、聖人の遺体の一部が腐らず残った場合に、死後不朽体といて奇跡の現れとすることはキリスト教圏では割と一般的です。例えばフランシスコザビエルも右手が残されています。
こちらの祭壇の上には王冠のモザイクがあります。なんというか、ここまで国のシンボルとして象徴される王冠も中々珍しいですね。
続いて中央を見てみましょう。ほの暗い照明の中で、中央に大理石の像が鎮座しています。
あの像はキリストでもマリアでもなく、聖イシュトバーンの像です。キリスト教を受容し、ハンガリー王国をヨーロッパ中に認めさせたイシュトバーン王がハンガリーにとっていかに重要な人物か物語っているようです。
祭壇の手前には儀式用のロープが張られてしまい近くまではいけませんでした。残念。
続いて左側の翼廊を見ます。
こちらには磔刑に処されるキリストの絵がある祭壇があります。少々色彩が違うだけで反対側と同じような祭壇ですね。
左側から右側を眺めるとこの聖堂が全体的に薄暗いのがよく分かります。もうちょっと照明を増やしてくれ~。
と、この辺りで中央から人が追い出され始めました。どうやら、16時から儀式をやるようです。
中央は完全にロープが張られてしまいました。脇の廊下も徐々に追い出されてきたので、聖堂の見学はここまでですね。
出口付近にはドームの設計図や建設当時の写真が展示されています。
実はこの大聖堂は建設に50年以上もかかったかなりの難産だったようです(国会議事堂は19年)。このような展示があるのもそうした歴史を反映しているのかもしれません。
下の写真にある断面構造からは二重ドームになっていることがよく分かります。
見学を終え外に戻ってきました。まだ16時前だというのに既に夕暮れです。ヨーロッパの冬は本当に昼が短い。
夕食にはまだ早いけれど、観光には暗すぎるのでいったん宿に戻ります。
大聖堂を裏から眺める。背後は半円状になっており、正面とはまるで違う雰囲気です。
ただ帰るのも芸がないので、世界遺産にもなっているアンドラーシ通りにやってきました。
流石に世界遺産だけあって雰囲気ある通りです。とはいっても車もバンバン通っており、普通に賑わっている通りですね。
この通りには内部が豪華なことで有名なブダペストオペラ座があるのですが、現在は改装中なのです。残念。オペラも演っていません。
と、そんな感じで通りをテクテク歩いていると、横断歩道を渡る歩行者が立ち止まって何かを眺めている場所に出くわしました。なにか珍しい車でも通ったのかな?と思い私たちも横断歩道に行ってみると……、
夕暮れの空が通りに映えて素晴らしい光景になっていました。みんなが横断歩道で立ち止まるのも納得。私たちも立ち止まって30秒ほど写真を撮りました。
こういう素晴らしい景色に偶然出会えるから旅行はやめられないですね。
この通りの近くにはリスト・フェレンツ音楽大学があります。おそらく世界で一番有名なハンガリー人であるフランツ・リスト(ハンガリー語読みすると、リスト・フェレンツ)の名前を冠した大学です。
建物の外見は白っぽいですが、内装はハンガリー的な装飾であふれていました。
ここではコンサートも開催されており、まさに今日18時からニューイヤーコンサートがあるようですが満席とのこと。まぁ当日席が取れるほど甘くはないですよね。
16時半頃にいったん宿に戻って18時頃夕食を食べに街に繰り出しました。
今日は宿の近くで夕食をとります。
ハンガリー料理のオンパレード。左にある黄金色のワインはトカイワインです。有名な貴腐ワイン(ぶどうにわざとカビを付着させて独特の香りと色を出すワイン)で、ルイ14世にして「ワインの王にして王のワイン」といわしめたそうです。
まぁ有名とはいえ酒に疎い私はさっぱり知らなかったのですが、地球の歩き方に特集ページが組まれる程度には有名なようです。
味は極甘口でした。はちみつでも入ってるのかというレベルで、ワインが苦手な私にとっては飲みやすい一品。
たらふく夕食を食べて20時に帰宅。
明日はホテルを移動するため、今日のうちに荷造りを終えておきました。
こうしたアパートメントに泊まることは初めてでしたが、安価で快適なので個人的には良かったと思います。ただ、マンションの1室なので場所が非常に分かりにくいのと、管理人が常にいないことが欠点ですね。その辺を許容できれば最高です。
22時には就寝。温泉行って、シナゴーグ行って、大聖堂にも行ってと1月1日にしては充実した1日でした。
明日はブダぺスト郊外の廃墟に行ってみます。
つづく
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