冬のハンガリー温泉旅 その9 ~ハンガリー国会議事堂 愛国心と執念の結晶~
朝6時に起床。
今日から3日間はハンガリーの首都であるブダペストを観光します。
まず初めに行くのはハンガリー国会議事堂。ここは外せないというブダペスト、いやハンガリーで最も訪れるべきスポットのようです。
今でも国会が開かれるハンガリーの中枢なので、見学には事前予約が必須です。
実は10日前に予約しようとしたら…
(・ω・) さて、12月31日から1月2日の空き状況はどうかな?
(, ゜Д゜) ん!?
(´・ω・) 12月31日の朝一番(8時から)しか空いてないじゃないか
(´・ω・) 危なかった……あと一歩で見れない所だった……
という感じだったので皆さんは早めに予約しましょう。クレカ支払いをしたらメールでチケットが送られてきます。
お値段6400フォリント(≒2500円)!!かなり高めですが、それだけのものが見れるのでしょう。期待は大きい。
宿でもそもそと朝食を食べてから、地下鉄に乗って最寄り駅のコシュート・ラヨシュ広場駅に向かいます。
7時30分に到着して地下鉄の駅を出るとそこには、まだ薄暗い曇天の下に国会議事堂が鎮座していました。
うーむ、一目で分かるすごい威厳。流石ハンガリーの顔なだけはあります。
まだ誰もいないコシュートラヨシュ広場を通り過ぎて、見学エントランスに到着。
既に人が大勢います。おそらく朝8時の回の人でしょう。
8時になったらゲートが開いてチケットのPDFを見せて入場。空港並みに厳しいゲートを通過します。まぁ現役の国会でもあるので当然ですね。
配られたイヤホンからは、解説のお兄さんの声が聞こえます。
しかし英語なので正直半分も分からない。まぁそこは雰囲気でいきましょう。
さて、近代的な白い廊下を抜けて1階分ほど階段を上がると……突然壁や天井が豪華になってきました。
むむむ、おお、これは凄いぞ。理解がちょっと追いつかない。
無機質な階段から、豪華絢爛な階段への移り変わりがあまりに突然でした。
いや~、凄いな。全部金色の塗装です。
天井には宗教画も描かれています。
赤絨毯の廊下に出ました。ここも柱は主に金色に塗装されています。
暫く廊下を歩くと、更に豪華になってきました。
下の写真のまさに正面が貴族院議会場。
柱とエンタブラチュアはローマ的、柱の上にアーチがあるのはビザンツ的、天井のヴォールトとドアはゴシック的、と幾つもの建築様式が複雑に組み合わされています。それでいて破綻をきたしていないのは奇跡的ですらあります。
そのまま廊下を進んでいくと、見所その1に出ました。
大階段です。
い~~~~や、これは凄い。天井や壁が黄金に光り輝いています。思わず絶句。可憐にして荘厳。国家の栄光を顕すにこれ以上の場所があるでしょうか。
柱頭をよく見ると、二重柱頭になっています。この様式はビザンティン建築によく見られます。
↑イスタンブールで見かけたビザンツ時代の2重柱頭
柱の上に梁を置かず、直接アーチに繋げる点もビザンティンの影響を色濃く感じます。
一方で、天井のヴォールトはゴシック的です。
東欧(ビザンティン)と西欧(ゴシック)の間にあるハンガリーらしい独特の空間となっています。
脇にちょこんと置かれているクリスマスツリーがなんともいえない味を出していていいですねww
大階段の次は「ドームの間」です。国会議事堂の中心にあるドームの真下にある、国会議事堂で最も重要な部屋です。
ここに置かれているのが「聖イシュトバーンの王冠」と宝剣・宝珠です。ドームの真下に王冠が置かれている光景は正に荘厳の極みですが……残念ながら撮影禁止!
なので、ネットから画像を引っ張ってきました。
Photo: s4svisuals / Shutterstock.com
ドーム自体は16本の走らで支えられおり、柱の上にはハンガリーの英雄たちの像があります。正円ではなく何本か束ねたような柱はゴシックっぽく、2階部分の意匠はビザンティンっぽい。
しかし、天井は全く違いました。
なんだ……これは。
16角形の星が張り付ている様な見たことも無い形式です。伝統的な様式に沿っていたこれまでとは違い、このドームだけが非常に異質です。細かい模様はイスラムの影響すら感じられるよう。
どこか優しげなゴシックやビザンティンの様式とは違い、「ここがハンガリーの中心だ!」という強烈な主張を感じます。
王冠の間は他では感じられない独特の緊張感がありました。変な行為をしたら逮捕でもされそうな神聖な雰囲気。教会ではないのに、ここまで象徴的な場を王冠に用意するというのも凄い話です。
ちなみに、ここにある聖イシュトバーンの王冠はハンガリーの国章にも描かれています。
十字架が曲がっているのは、慌てて箱を締めた際に蓋が当たったかららしい。伝説的には1000年前、歴史学的にも800年前には使用されていた超一級品の美術品でもあります。どんなに立派な人物でも、この王冠を戴かない限りは王として認められなかったそうな。
5分ほど滞在して次に行きました。
ドームの間の横にある、貴族院のホールです。
議会に赴く前に議員たちが懇談した場所。大階段やドームの間と違い、温かみのある場所です。
柱の上には英雄……ではなく、様々な職業を模した像があります。議員は一市民の代表であることを忘れないためだそう。
犬を連れているのは猟師ですかね?
下に敷いてある絨毯はヨーロッパ最大の1枚布の絨毯だとか(ガイドの英語解説より)。観光客に踏ませていいのでしょうか。
お次に行くのはいよいよ貴族院議事堂です。実は現在のハンガリーでは貴族院は廃止されて一院制になっているので、ここは議会としては使われていません。
相変わらず金塗装の柱の間から議場を眺めます。
おお……ここは思ったより小さいですね。日本の国会よりもだいぶ小さい。まぁ豪華さではハンガリーの圧勝ですが。
議長席の奥には様々な紋章があります。中央にあるのは聖イシュトバーン諸国(つまり昔のハンガリー王国の領土)の紋章です。オーストリア=ハンガリー帝国時代のハンガリーは今のルーマニアからクロアチアまである中欧でも屈指の大国だったことが伺えます。
長いような短いような、貴族院議事堂を見たら、そろそろ見学も終了のようです。
廊下を歩いて再び地下へ。
地下まで戻ると、最近できたばかりとおぼじき学習コーナーに案内されました。
国会議事堂に関するいくつかの展示がビデオで紹介されています。流し見してすぐに出ようとしたのですが、なんと日本語の解説もあって思わず見入ってしまいました。
下は職人による修復作業の解説です。
18世紀の職人技の集合体みたいな建築なので、毎日どこかを修復している様です。
下の星は社会主義時代に掲げられていたものです。1990年の民主化に伴い外されました。
この他、見学では行けなかった部屋の映像も見れます。
首相執務室は流石の豪華さですが、守衛官室は割と普通ですねwww
館内の冷暖房に関するビデオ。議事堂内は完成当初からパイプが張り巡らされており、セントラルヒーティングとなっています。このシステムは今でも現役のよう。驚き。
議事堂のデザインについてのビデオ。実は公募でデザインを決めたので、他の落選案の展示もありました。
と、まぁこんな感じで結構興味深いし面白いのです。議事堂内の見学は45分ほどでしたが、この解説も45分くらい見ていました。
すると、同じグループに30人くらいいたのに、いつのまにか最後の一人になっていて焦ります。解説の兄ちゃんはずっと待っていたのでちょっと申し訳なかった。
この学習コーナーを抜けたら、ミュージアムショップを通って地上に帰還。
さて、中を見たので次は外から眺めます。下の写真は北の側面です。
北東から眺めます。左に見えているのがさっき真下まで行ったドームですね。
ネオ・ビザンティンの雰囲気でアーチが多かった中と比べて、外はネオ・ゴシックらしく直線的で威厳を感じます。
ちなみに、壁にはハンガリー貴族の紋章が彫られています。詳しい解説を探すも見つからず由来は分かりませんでした。
議事堂の前はコシュート・ラヨシュ広場となっていますが、あまり広くないため正面から議事堂を一望するのは不可能です。
正面から見るとこんな感じ。
上には議事堂でも見た聖イシュトバーン領邦の紋章が彫られています。
さらに柱の上には聖イシュトバーンと思われる像が柱の上に乗っています。
酸性雨の影響など微塵も感じさせない見事な彫像です。いや、本当にこれほど巨大な建物なのに、細部まで精密なのも凄い。
広場の向かいにはハンガリー民族博物館があります。こちらも立派なデザインですが、それもそのはず、国会議事堂のデザイン公募の落選案だからです。
こちらの方がギリシア的でより重厚ですが、中世からの歴史を持つハンガリーとしてはゴシック主体の今のデザインの方がふさわしいように感じます。
南東から朝日を浴びる国会議事堂。
半周して南面まで来ました。やはり白い壁は光を浴びた方が輝いてみるのでいいですね。
ここにある銅像はアンドラーシ・ジュラのものです。
オーストリア支配下のハンガリーで、自治権の確保に奔走し見事ハプスブルク家からハンガリー独自の議会設置の許可を得た人物です。間違いなくこの人物がいなかったら国会議事堂は建たなかったでしょう。
当時のハンガリーは数百年もの間、オスマン帝国→ハプスブルク家と他民族の支配下に置かれており、内政権の獲得は悲願中の悲願でした。「俺たちは決して2等市民なんかじゃない!伝統と歴史あるハンガリー国の国民だ!!」という強烈な気迫と愛国心が、ハンガリーの誇りの結晶とも言える、これほどまでに立派な国会議事堂という建築を作ったのです。
そう思うとちょっとだけ胸が熱くなるような感動すら覚えます。
さてと、国会議事堂はこのへんにして、ドナウ川を渡ってブダ側に行ってみます。
ドナウ川沿いから国会議事堂を見るとこんな感じ。やはりこの建物は対岸から見ると美しいですね。
ここまで川に近いのに、100年経っても建物に一切歪みが無い点も凄いと思ます。基礎も相当頑強に作り上げたのでしょう。
今回は、渡し船で向こう岸に渡ります。
バスで渡ってもいいけれど、やっぱ折角だしドナウ川を渡ってみたいですよね~。ドナウ川クルーズという字ずらだけで垂涎ものです。
つづく
harimayatokubei.hatenablog.com