転がる五円玉 ~旅と城と山~

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屋久島・宮之浦岳縦走② カオス極まる高塚小屋と縄文杉の回

ここは定員100%の高塚小屋。私たちの後に中年夫婦が到着したのですが、床には頭を奥スペースしかなく、土間にザックを置いてなんとか寝れるようにしました。要するに隙間は完全に無い!これでさらに登山者が来たら終わりだぞ……。と思っていましたが、時刻は19時を回ったので流石に大丈夫だろう、と判断して就寝。

いつの間にか外は稲妻が走る豪雨になっています。若干恐怖感を感じるレベル。何と言っても半年前に豪雨で山中に登山者が取り残される事態になっているからです。

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そうは言っても今の私たちに出来ることは何もない。湿度100%で大変不快ながらもあんとか寝ようとします。

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……。どれくらい時間が経ったか。雨音だけが響く小屋内からは外の稲妻の光が良く見えます。

 

……??むむむ、光はなんだか光っている時間が長いぞ。それに足音まで聞こえる……。

 

!?

オイオイオイ、まさか、まさかこの時間に着いたのか……!?時刻を確認すると22時。いくら何でも遅すぎるだろ。

一度完全に寝静まったので小屋内はまだ静かですが、全員この事態に気付いているはずです。「ぐわ~、起きなきゃならないのか~」という心の声が聞こえてきそう。

 

謎の光は3分ほど小屋の周りをグルグルした後に扉を開けて入ってきました。人数は……5人。この期に及んで誰も起床しませんが、同行人の「さぁ皆さん起きましょう!詰めて詰めて!!」という声で全員動き始めました。こういう時に頼りになる。

もう仕方が無いので完全にギッチギチに詰める。一人あたりの幅は20㎝あったか怪しいレベルです。それでも捻出できたのは3人分だったので、残りの2人は土間で寝る事になりました。

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夜10時に大混乱に陥った小屋内。最早笑いしか出ない。あらゆる意味で悲惨です。

今更到着した5人は外国人の様子。遭難者か?と思いましたが寝袋もマットも持っているので最初から小屋泊の予定だったと推測されます。うーん、正気か?
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ちなみに上の写真には座禅を組んだまま半笑いしている薄気味悪い男がいますが、彼はスペース不足の犠牲者でもなんでもなく、家でも座って寝ているただの異常者です。

インドの修行僧かよ……。

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と、思っていたら外国人から「ヨガ・マン」と名付けられて思わず笑ってしまいました。(そして彼は仲間内でヨガ・マンと呼ばれ続けるのであった……。)

 

そんな訳で当初は大混乱だった高塚小屋も、寝床が固まったためか冗談を言えるほど落ち着きを取り戻したので、23時頃に再び就寝。

湿気で最高に蒸れるわ、体を斜めにしないと寝れないわで最悪の状況ですが、無理やり寝て朝になりました。


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朝7時30分の高塚小屋です。実のところ朝6時頃から他の登山者はドカドカ出発したのですが、もう少し冷静にこの小屋を見たいと思ったのと、単純に大雨だったので7時30分まで残りました。
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広々とした小屋でのんびりと朝食を食べて7時45分に出発。すると、出発に合わせて太陽が顔を出したではないですか!!
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昨日と違って晴れた!という感じではありませんが、日差しがあるだけでも景色は大分違います。
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深緑が美しい。雨で塗れた木々が光り輝いてちょっと写真では伝わらないほど美しくなっています。
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というか10月なのに深緑なのですね。やはり屋久島は生命力が凄い。

 

高塚小屋を出て10分程度で屋久島のハイライトである縄文杉に到着。実は朝8時までには縄文杉に着きたかったのです。

理由は日帰り登山者を避けるため。縄文杉を日帰りで見るハイカーは非常に多く、はっきり言って邪魔です。荒川登山口の始発バスが5時30分着で、縄文杉まで3時間超かかることを考えると、朝8時までなら日帰りハイカーがいない縄文杉を楽しめるのです。

 

縄文杉の周りにはウッドデッキが整備されており、そこから眺められます。
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何か所かあるのでよく見えるところに移動します。

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圧倒的質量。太い幹が光を反射して神々しく光り輝いています。年老いた木のはずなのに、若々しい枝葉をこれでもかと伸ばす姿は生命力の塊のよう。

幹はゴツゴツして端正という言葉は似あいませんが、とにかく存在感が圧倒的。遠路はるばる来た甲斐はあったというものです。

 

しばし感動しつつ眺めていると次第に曇ってしまいました。
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やはり光が当たっている方がいい感じですねぇ。森に佇んでいる感じもこれはこれで良いのですが。

ちなみに縄文杉近くの沢は水場扱いです。

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ここから先は30分に一度水場が表れるという超絶水場地帯。こんな感じの小さい沢が無数にあります。
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とはいえ木道が整備されており歩きにくさはありません。むしろ滑るのが困るくらい。
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ガスったり晴れたりを繰り返しながら森林の中を進みます。
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普通の山でありがちな埃っぽさが皆無です。本当に空気が清浄。歩いていてここまで楽しい山は初めてです。
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8時40分に大王杉到着。縄文杉と同じようにたまたま晴れ間がのぞいています。本当にひたすら運がいい。
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大王杉の根元に生えている苔がいい感じだったので接写。
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むむ、やはりマクロレンズが欲しいな……。

淡々と樹林帯を進む。さっきよりも木が濃くなったような気もしますね。
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9時10分にウィルソン株到着。この辺りで日帰りハイカーが多くなってきました。ウィルソン株も渋滞気味。
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3分ほど待って中に入ります。この切り株はシルエットがハートに見えることで有名です。
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意外とアングルがシビアですが所定の位置に立てばこの通り。

ただ、個人的にはハートよりも、切り株の大きさの方が印象的でした。10畳くらいの部屋くらいありそうなほど広いのです。
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この木に包み込まれる感覚は面白い。多少並んでても行く価値はあります。


ウィルソン株を出発して10時50分頃に大株歩道入口に到着。ハイカーだらけすぎて写真を撮り忘れました。

登山道は一旦終わりで、ここから先は森林鉄道です。トイレもあるちょっとした広場になっているので休憩するグループも多いのでしょう。

 

特に休憩も取らず出発。くねくねと曲がる線路上を歩きます。実は現役の線路なのでレールなどもしっかりしている印象。
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当然傾斜も殆ど無いのではちゃめちゃにスピードが出ます。時々登ってくる集団とすれ違いますが、道が広いのでさほど障害にはならなくてすみました。

 

40分後の10時30分に楠川分かれに到着。時速5kmとほぼ下界と変わらないペースでここまで到着。

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ここからは辻峠まで300mも一気に登ります。最後の最後でこれは非常に辛い!辛すぎる!!本当に辛かったので写真も無し。

11時15分になんとか登り終えて辻峠に到着しました。
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おお!?しょぼい合羽を着た集団がいる……。それもそのはず、ここ辻峠は白谷雲水峡の最奥に位置しているため、縄文杉よりも更に気軽に行けるのです。

徒歩15分の所に太鼓岩という眺めの良い所があるようですが、見事にガスってるのでパスしました。まぁ宮之浦岳からの展望を見ているしね。

 

下るにつれてどんどんガスが多くなってきました。雲水峡の名に恥じない状況です。
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サクサク下っていわゆる「もののけの森」に到着。急に人が増えた。天気を見て太鼓岩まで行かなかったグループが多いのでしょう。
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これまでの道も苔は多かったのですが、ここはまた一段と多い。どれだけの湿気があればこうなるのか。
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めちゃくちゃ人が増えたのでこの通り。
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そんな人が多い場所でも渡渉点があります。今は余裕ですが、増水したらかなりヤバそうな予感。
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ちなみにこの辺りの道は江戸時代に造られたものです。屋久島は平地が少ないため米があまり採れず、年貢は米ではなく木で納めていたそう。いわば江戸時代版の林道ですね。
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今でこそバスで一気に下界まで行けますが、江戸時代はここまで来るのも当然全て徒歩だったのでしょう。想像を絶する苦労です。

ちなみに、屋久島から納められた材木は高値で売られて薩摩藩は大儲けしたそうな。いつの時代も儲けるのは中間なのか~。

 

さて、下るにつれてどんどん霧が濃くなってきました。
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吊り橋もこの通り。底が見えない。
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豪快な滝もあるのですが、いかんせんボヤボヤです。
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この辺りから登山道ではなく階段付きの道になりました。ゴールは近い。

 

そして、遂に12時30分。白谷雲水峡の入口に到着!お疲れさまでした!!
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バスの案内所などありますが、レストランなどは無い様子。自販機はありました。

30分ほど茫然と座っていると宮之浦岳行きのバスが到着。
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30分前から並んでいる人がいましたが、バス到着後に並んでも座れました。まぁ、補助席でしたが……。

13時50分に屋久島観光センターに到着。ロッカーに入れてあった着替えを回収します。
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宿のチェックインは15時からなので昼食。トビウオラーメンです。美味い。
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1時間ほどゆっくりして、迎えに乗って宿へ。ようやくゆっくりできる……かと思いましたが、汗でドロドロの体を洗いたかったので温泉へ向かいます。
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楠川温泉です。設備は非常にしょぼいながらもお湯に浸かれて満足しました。

あまりにも疲れ果てたので宿で3時間ほど寝て次は夕食です。
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美味かった……気がする。久々に酒を飲んだら完全に酔って記憶が無いのです。
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そのあとは宿に戻って20時頃には就寝したはず。果てしなく疲れて心地よく酔って布団で寝られる快感!!

 

まとめ

いや~~、やっぱり世界自然遺産は違った!そこらの山とは違う圧倒的に美しい森林!空気!!水!!!とにかく樹林帯が美しいのです。晴れよりもむしろ雨の方が森は美しく輝くと思います。

一方、宮之浦岳周辺の稜線から望める雄大な峰々も素晴らしい。こちらは晴れた方が良いですね~。洋上アルプスの名に恥じない圧倒的な景観でした。島とはとても思えない感じ。

あらゆる意味で特徴的な島でした。ここはもう一度来てもいいですね。ただ、混雑だけはなんとしても避けたいところです。そのためにも、出来れば一泊推奨!荷物を全部持ってくれるツアーもあるので……ぜひ一泊を。

 

 ↓おまけ

harimayatokubei.hatenablog.com