ナミビア でレンタカー旅行 その14 ~スケルトンコースト後編・千年生きるウェルウィッチア~
オットセイから解放された我々は北に向かってひた走る。
この道、舗装路ではないのですがダートほどガタガタでもありません。これはどうも、塩水を撒いて固めた簡易舗装のようです。このため、この道は「塩の道」と呼ばれているそうな。一見しょぼそうですが、時速90㎞は余裕で出せます。
ケープ・クロスから走る事100㎞ほど、スケルトンコーストの南入口であるUgabゲートに着きました。
ここから先がスケルトンコースト国立公園です。ここら辺一帯がスケルトンコーストと呼ばれていますが、ここが核心部という訳。
この中には予約必須の公営キャンプ場しかないため、そこの予約が無い者は同日中にスケルトンコーストを出る必要があります。このため、入場は7時30分から15時まで、退場は7時30分から19時までと厳格に決められています。つまり、仮に16時にここに着いても入れさせて貰えないという事。
ちなみに、北の門までは約140㎞なので、4時間もあれば余裕で越えられます。
門の右側にある事務所で80NAD/人の入場料を払い、車のナンバーなどを申請書に記入して入場。
塩水で固めた簡易舗装が終わり、普通のダートになりました。しかも霧がかかっておどろおどろしい雰囲気に。
途中で入り江のような場所がありましたが、濁った水があるだけで何も面白くない。
核戦争で荒れ果てた世界のような光景です。生き物の気配は皆無。
もう少し走ると見えてきたのがこちらの廃工場。
おそらくはダイヤモンドの掘削機です。
うち捨てられて100年くらいは経っているのではないでしょうか。おそらくコールマンスコップと同時期のものです。
ただ、なぜこちらはコールマンスコップのように繁栄しなかったか?あちらと異なるのが港の存在の有無です。コールマンスコップはリューデリッツという天然の良港があったため、街ができるほど栄えましたが、こちらは遠浅の海岸が続くのみです。ダイヤモンドを掘っても搬出できる港が無い。港までもっていく手段も無い……。
鉱山が成り立つにしては圧倒的に不利な環境だから放棄されたのでしょう。
海が比較的近いためか鉄の躯体は錆まみれでミルフィーユのようになっています。そのうち錆まみれになって崩壊していくのでしょう。もしかしたら、砂の中に他の工場が埋もれているかもしれません。
廃工場をすぎて北を進むとだんだん晴れてきました。景色は相変わらずですが、気分はやっぱり変わります。
北の門へ向かう分岐をちょっとだけ通り過ぎて、TorraBayという地に着きました。
どうやらキャンプサイトがある様子。予約すれば泊まれるようです。
近くには大西洋に面した白い砂浜があります。
この旅4回目にして、最後の大西洋。
なんか久々にニュートラルな視点で海を眺めているような気がします。普段は「湘南の海」「アガラス岬の海」「リューデリッツの海」のようなピンポイントの視点で海を感じているのですが、ここは特に何もない場所だからこそ純粋な「海」として海を眺められます。それこそ、向こうの南米や、遥か北のヨーロッパまで思い起こせます。海は広い……。
まぁ、要するに何もない所もいいよね、という事です。
ところで、海岸に立っていると時々覚えのある悪臭が漂ってきます。「あぁ、ケープ・クロスのオットセイの臭いだ」と気が付いて臭いの元に目を向けると、オットセイの死体が転がっていました。
・・・・・・?
・・・・・・、ま、まさか!
ケープ・クロスの悪臭はオットセイの体臭でも糞尿の臭いでもなく、死体の腐臭だった・・・・・・!?
お、オエ~~~~~ッ!!
思い出して気持ちが悪くなってきました。動かない子供のオットセイがいるな、とは思ってましたがアレは死んでいたのか!しかも腐っていたのか……。
いや、逆に考えるんだ。先に腐臭だと知っていたらケープ・クロスであんなにのんきに観光できなかっただろう。俺らは運が良かったのだ……。
気を取り直して北の門に向かいます。砂の組成が違うのかセスリムあたりの砂丘と違い白色をしていますね。
T字路を左に進み内陸へ行きます。
さて、この辺りに生えているのが1000年生きると言われているウェルウィッチア(和名:奇想天外)です。生物に詳しい人なら知っているはず。
砂漠が大部分のナミビアを代表する植物の一つです。実際に、ナミビアの国章にも描かれています。
下にあるニョロニョロした緑のものがウェルウィッチアですね。
wikipediaによると生息域はスケルトンコーストの辺りです。
実はスワコップムントの近くにも世界最大のウェルウィッチアがあるのですが、観光地化されたウェルウィッチアよりも自然に生きているものを見つけたいと思ったのでスルーしました。
そういう訳でこれまでの道のりも目をこらしてウェルウィッチアを探していたのですが、下の写真のような草木一本も無い荒涼とした大地が広がるばかり。
これは……思ったよりも生息がまばらで見つからないかな……。と思った矢先、視界に明らかに岩や砂とは違う植物が目に入ってきました!
こ、これは!!!バックして確認します。
ウェルウィッチアだ……。本当にあった!!
この繊維質な葉の質感……間違いありません。
いや~嬉しい。観光地に行くのは簡単ですが、見つけるのは大変です。ナミビアの砂漠で貴重なウェルウィッチアを見つけられたのは奇跡かもしれません。草木一本も無い大地を睨みつけてウェルウィッチアを探すのは本当に大変だったのですよ……。
ひとしきり満足して車を走らせること1分、枯れ川の真ん中にウェルウィッチアっぽい植物をまたも見つけました。
うおおお、ウェルウィッチアだ。しかもさっきよりデカい!!
ん……?なんか向こうにも別のウェルウィッチアがありますね(上の写真にも写ってます)。
ラグビーボールのような雌花をつけています。
それに対して細くて沢山あるのが雄花です。
まぁそれはともかく、ウェルウィッチア意外と多いかも?
下の写真だけでも5株は見えています。
うーむ、もうちょい貴重なのかと思ったのですが、かなりの数が生息していそうな感じ。場所は20°22'19.3"S 13°22'31.8"Eあたりです。枯れ川に生息している事を意識すれば簡単に見つけられるはず。
そんなウェルウィッチア地帯を後にして内陸へひた走ります。
アメリカンな風景の中東へ。海岸沿いよりも若干ながら草が生えてきました。
そして17時頃に北の門に到着!19時の門限には余裕で到着しました。
ゲートが閉まっているので事務所の係員に開けてもらいます……が、鍵が閉まってる??
むむ、これはどうしたものか。事務所の周りをウロウロすると、ラジオを聴きながら洗濯している兄ちゃんがいたので声をかけてみました。
「おーい、門開けてくれや」
「お前ら今着いたのか!?あー、俺はアシスタントで出場手続きができないんだ」
「マジか。係員はいつ来る?」
「明日の朝8時には来る。今日はここにあるキャンプ場に泊まりなよ」
「値段は」
「一組80NAD(=640円)」
「安い!分かった。ここに泊まろう」
と、いう訳で門のすぐ近くにあるキャンプ場に一泊して係員を待つことにしました。
一人あたり200円ちょいという破格の値段ですが、水道トイレ完備でキチンとしています。どうやらアシスタントの兄ちゃんが小金稼ぎでやっている様子。
景色は抜群です。キャンプ場は風を避ける意図で谷底などにある事が多いのですが、ここは斜面にあるからですね。
いつも通り適当に具材を入れて調理。
煮ている間に周囲を散歩します。
最寄りの街まで171㎞。いや~それにしても空が広い。
しばらくすると日没になりました。どうやら今夜泊まるのは我々だけの模様。
そしてソーセージ入りのシチューが完成。
味は普通です。キャンプ飯にも多少は慣れてきました。
夕飯を食べたら就寝です。まだ19時すぎですが、やる事が無い!
砂丘が続くセスリムとは異なり、陰鬱な風景が続くスケルトンコーストでした。一口に砂漠と言っても色々な表情があることを実感。
ただ、やはりオットセイの臭さが強烈な印象として残っています。いやマジでヤバかったのですよ……あれは……。
つづく
harimayatokubei.hatenablog.com
今回の行程
宿情報
正式名称はないっぽい。それに本来は無料らしい。まぁ安いのでいいかな、という感じで払っていた。オフシーズンとかでもやっている模様。
売店などは無いので食料と水は絶対に持っていくべし。まぁ、水も食べ物も持たずにスケルトンコーストを抜ける人はいないと思うが……。