転がる五円玉 ~旅と城と山~

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2019年ローマ旅行:カピトリーニ美術館その1 ~偉大な皇帝と出会う~

トッレ・アルジェンティーナ広場からヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂の辺りまで戻ってきました。そこから長い階段を上ると、カピトリーニ美術館があります。世界最古の美術館と言われています。

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美術館前の広場中央には威風堂々とした騎馬像が鎮座しています。

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これはマルクス・アウレリウスの騎馬像です。いやもう、凄まじい威圧感です。帝国の長としての威厳をこれでもかと演出するこの騎馬像は後世に多大な影響を与えたと言われています。

ちなみに公害の影響を避けるために実物は屋内に移設されました。現在広場にあるのはレプリカです。

 

さて、13.5ユーロを払っていざ入館。まずは中庭に出るのですが、早速大物を見つけました。

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コンスタンティヌス帝の像です。世界史の資料集には必ず載っている像ですね。人物的にも物理的にも大物です。2階の屋根まで届こうかという巨大な像の断片が展示されています。手がなんだかシュール。

頭部をよく見ると目の大きさが際立ちます。これは後期ローマ美術の特徴です。アウグストゥスの頃は写実的だったローマの彫像も、この頃には演出的になっている事が分かります(そして平面的な中世美術へ……)。

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ちなみにこの像は全てが大理石だった訳ではなく、服を着た胴体は木のフレームに青銅板を張り付けていたようです。だから頭と手足しか残っていないんですね

ちなみに昔はこんな感じに展示されていたらしい。

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いくら何でも雑すぎるような。

 

館内の吹き抜け中央には広場にあったマルクスアウレリアヌスの騎馬像の実物があります。金メッキが所々に残されていますね。

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馬の筋肉の描写が凄い。特に凄い衣装を身にまとっている訳でもないのに、感じる威厳は皇帝そのものです。本当に素晴らしい美術品です。

続いても皇帝の像です。こちらはヘラクレスに扮するコンモドゥス帝です。マルクスアウレリアヌスの息子なので顔がそっくりですね。

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この像はとにかく保存状態が素晴らしい。隅々に至るまで完璧に残っています。

コンモドゥス帝は無能な暴君として知られています。いくらヘラクレスの格好をしようと、父親の威厳には遠く及ばないのが残念な所。

 近くにはまたまたコンスタンティヌス帝のブロンズ像があります。

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眉毛の描写やくっきりとした目、しわが全くない顔などのように、写実的ではない様子が見て取れます。

近くにあったブルータスの像と比べると違いが分かりやすい。

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カエサルを殺したブルータスの像の方が明らかに立体的です。しかしブルータスさんは涙袋が大きいな……。

 

次はシチリア王シャルル・ダンジューの像です。この像を作ったのはアルノルフォ・デ・カンビオという彫刻家です。神曲のダンテとほぼ同じ時期の像ですね。

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王の象徴であるライオンの椅子や王冠、巻物があります。この像は顔が大変に写実的であることが注目に値します。

ヨーロッパの美術は「立体の古代ギリシア・ローマ→平面的な中世→立体的なルネサンス」と移りました。今回見た像の順番ではブルータスの像→コンスタンティヌスの像→シャルル・ダンジューとなる。

下は平面的な中世美術の代表格であるサン・セルナン教会のレリーフです。

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見ての通り立体感は殆どありません。このレリーフからシャルル・ダンジューの像、そしてミケランジェロのような洗練の極みの彫刻までは400年ほどかかりました。上記の像は立体へ回帰するルネサンスの萌芽を感じられる一品なのです。

(このあたりの事情は下記サイトに詳しい)

ameblo.jp

 

ハンニバルの間には象に乗って進軍するハンニバルの絵がデカデカと飾ってあります。

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これが描かれた15世期はオスマン帝国ビザンツ帝国を滅ぼし、凄まじい勢いで欧州を侵略していた時代です。そのためかムスリムっぽい風貌ですね。象の耳が蝙蝠みたいになっています。作者は象を見たことがなさそう。

 

隣の部屋には有名な「カピトリーニの狼」の像があります。これは狼によって育てられた初代ローマ王ロムルスとレムスを表しています。

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実は長らく紀元前5世紀頃の製作と思われていたのですが、2007年に11世紀頃の製作であることが判明しました。また、ロムルスとレムスの像は15世紀の追加製作です。どことなくコミカルな狼と写実的な子供の違いは製作年代の差なのです。

古代ローマの文字通り象徴として扱われてきたのでローマ市内だけではなく世界各地にレプリカがあったりします。

 

近くにはとげを抜く少年の像があります。Spinarioとも呼ばれるこの像は紀元前3世紀~1世紀頃に造られました。

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こういう日常の何気ない風景をわざわざ銅像にするセンスに脱帽です。しかし、髪の毛が重力に逆らっているというか、ワックスでもつけたかのように固まっています。これは頭だけ別の像から持ってきたからでは?と言われています。

実はとげを抜く人物の像は模倣作が世界各地にあり、この像はそれらのオリジナルです。また、ローマ時代の彫像は一度地中に埋もれてから、後世に発見された物が多いのですが、この像は長年教会に置いてあり一度も失われませんでした。

 

他にも絵画などがあったのですがスルーして次の館へ行きます。広場の下をくぐるこの地下通路には地下らしく古代の墓が沢山展示してあります。

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つづく

harimayatokubei.hatenablog.com

今回訪れた場所

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