転がる五円玉 ~旅と城と山~

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剱岳早月尾根を日帰りピストン ~永遠の樹林帯と残雪~

2021年7月、待ちに待った梅雨明けをもって夏山シーズンが始まりました。

今年一発目に行くのは北アルプス剱岳(2999m)。週末の天気は土曜快晴で日曜は曇り。剱岳立山室堂から行く別山尾根ルートがメインですが、行程的に1泊は必須。日曜の天気が怪しいので、今回は土曜の日帰りで行ける早月尾根ルートで登ることにしました。

ただ、メインではないルートには難点が付きものでして、、、この早月尾根の難点はとにかく長いこと。標高差は圧巻の2200mで、コースタイムも16時間40分と超ヘビー級です。この標高差も登り返しで稼いでいるわけではなく、標高750mの馬場島から2999mの山頂まで一直線に上がり続けるだけという潔い急登です。(ちなみに有名な難所であるカニのタテバイ/ヨコバイは別山尾根の方)

正直言って日帰りとしてはかなり辛いルートですが、自分の腕試しも兼ねて登ってみることにしました。

 

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馬場島 4時30分

早月小屋 7時30分

剱岳山頂 11時ー11時30分

早月小屋 13時30分

馬場島 15時30分

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午後10時に京都で岡山の友人と合流して富山へ。北陸道をひた走って午前2時着。富山で埼玉からきた友人と合流して、腹ごしらえをしてから水(6L)と食料を買って富山を3時発。富山平野を横断して走ること1時間、午前4時に登山口である馬場島に到着しました。

家から6時間経ってるしほぼ徹夜だし死ぬほど眠い。しかし、今日の行程を考えると仮眠している暇はありません。

わずかに白みだした空を眺めつつ4時15分に出発。周りの車からも続々と出発しています。かなりの難コースですが、流石は天下の剱岳。2~30人くらいはいそうです。

有名な「試練と憧れ」の石碑を拝む。ここから2200m登るのか……若干の絶望感と共に覚悟を決めて山道に歩き出します。

ごく普通の、しかし結構な傾斜の道をひたすら登ります。200mちょい登ると標高1000mの平地に到着。若干の休憩地になっています。ここでヘッドライトは収納。

先は長いのでたいして休憩もせずに出発。ときおり出現する立山杉の巨木を眺めながら黙々と歩きます。

木の根と岩が合わさった急登。詰まらないが歩きやすくはある。

1400m看板を通過。10分休憩。

1600m看板。ここでは5分休憩。

とにかくじわじわ高度を上げていきます。途中で鎖場らしき場所はあるものの、基本的には歩きやすくて単調な道のりです。

そして出発から3時間。遂に早月小屋(標高2200m)が見えてきました!

長かったァ~~~~~!!!とにかく、とにかく長かった……。登山口から標高差1400mの樹林帯を淡々と登って心が無になった。

早月小屋は早月尾根唯一の山小屋です。早月尾根は水場が無いので、貴重な補給地点です。ちなみに私は金払いたくないので下界から6L担いできました。重い。

景色はいよいよ北アルプスらしくなってきました。奥には立山が見えています。

登山口にはあれほど人がいたのに今は10人くらいしかいません。時間的にこの10人が早月尾根日帰りする仲間でしょう。

20分ほどの大休止をして登山を再開。ここから山頂までは標高差800m。手が届くところまで来ました。

森林限界を超えて稜線の岩場が続きます。

まとまった残雪が出始めるあたりで遂に剱岳が見えてきました。近いような遠いような……逆光でよくわからん。

左を見ると小窓尾根の豪快な稜線が見えます。アルプスっぽくていいね!

岩場はありますがまだまだ余裕です。むしろ日差しがキツい。ド快晴で眩しすぎます。

2800mの小ピークで休憩。富山平野からここまでの尾根が一望できます。いや~これを全部歩いてきたのか。感慨深いですね。

そして剱岳山頂も間近に見えています。さぁここからが核心部。剱岳の岩場に挑みます。

さっそく岩場のトラバースが出てきました。

ここは残雪があるので下が見えず怖くない。

が、ちょっと先の場所だと、、、

左手は谷底に一直線です。これは怖い。

特に怖かったのがここです。なんと登山道が完全に垂直の崖になっており、途中にはボルトが1本刺さっているだけなのです。一旦は完全に空中に身を投げ出す形になります。

ここは流石に震えましたねー……というか集中しすぎて記憶がないです笑

そんな恐怖ポイントを抜けるといよいよ最後の登りまでやってきました。

早月尾根最大の難所として知られるカニのハサミに突入します。

が、難なくあっさりと通過。あれー?と思いましたが、どうやら残雪により下が見えず、高度感を全然感じなかったようです。これは拍子抜け。

この辺りから横を見ると前劔や立山が望めます。奥の稜線は穏やかなのに、こっちはものすごく険しくコントラストがすごい。

さぁ、あと少し。平凡な、でも険しい岩場をいくつも越えていくと……

おっ、なんか剣が見える。という事はあれが山頂か!

やったぞ。剱岳登頂!!

やったー!!!この達成感。半端ねぇ!!!

向こうに見える立山北アルプス。美しすぎる!

そして遥か向こうには富士山まで。7月なのにこんなに澄んでていいのか!?

鹿嶋槍・五竜後立山連峰もばっちり見えてます。

しかし何より目を引くのは周囲の尾根の鋭さでしょう。別山尾根の鋭さには絶句。写真中央付近がカニのヨコバイだと思われますが、あんな所歩けるのか……。

興奮が収まったので昼休憩。7月中旬と時期的にはやや早いですが、山頂には20人程度もいます。

とはいえ思ったよりも山頂が広いのでのんびり休憩できました。電波もOK。

名残惜しいですが、徐々に雲が湧いてきたので下山します。11時30分下山開始。

目指すべき馬場島ははるか下です。なんだこれ……長すぎるだろ……。

間違って別山尾根の方に降りると大惨事なのでここの分岐は気を付けます。

富山湾もはっきり見えてて良い。

下りの開始です。どこまでも続くガレ場を慎重に下ります。

難易度は低いのですが、常に高度感を感じます。精神的に疲れる。とにかく慎重あるのみです。

カニのハサミやボルトの崖を越えて、2800mの小ピークまで戻ってきました。ここまで来れば高度感も減るし、鎖場もほぼ無いです。あ~疲れた。

なんて余裕こいてる場合ではない。まだまだ馬場島までは2000mの下りがあるのです。

立山の眺めは相変わらず良いのですが、雲が湧いてきました。雨が心配だな。急がねば。

13時30分。早月小屋に帰ってきました。

完全にガスりましたね。まぁここからはほぼ展望が無いのでどうでもいいです。ちなみに相方はここで水を購入。私は残量1.5Lです。多分大丈夫なはず。

 

20分ほど休憩して出発します。ここからは1400mの樹林帯の下り。朝から8時間も歩いているのにまだ下るの……??嫌だー!嫌すぎるのですが、下るしかないので下ります。

暗い樹林帯をひたすら黙々と下る。だんだんと気温も上がってきてますますしんどさが増してきました。

ノンストップで下り続けて2時間半後。15時30分に馬場島に着きました。

 

これは、、、これはキツかった。本当に長かった。行きの勢いも無く、岩場の緊張感も無くひたすら淡々と歩くのみ。これを楽しめるほど私はまだ成熟していません。

試練と憧れの石碑の向こうには雲に隠れた山々が見えていました。最早疲れすぎて達成感も感じることもなく。ただただ無事に下山できたことに安堵。

馬場島の温泉は午後2時で終了しているので、平野にあるアルプスの湯で汗を流して宿に向かいました。宿では当然のように爆睡。徹夜でこの行程をこなしたのはあまりにも疲れた。

 

翌日は海王丸をちょっと観光してのんびり帰りました。本当に疲れた。

 

剱岳の感想

やはり標高差と長さは圧倒的でした。水場が実質的に早月小屋しかないのも難易度に拍車をかけています。とはいえ、剱岳の圧倒的な高さを存分に体感できるので、その点は別山尾根より優れているのではないでしょうか。特に終盤の岩場は圧巻です。

ただ、やっぱり樹林帯はダルい。12時間の行程のうち6時間程度は樹林帯で、ひたすら展望も無く飽きました。もしかしたら小屋で1泊すると、樹林帯を2日に分けられるので飽きがこないかもしれません。

しかしながら、やはり剱岳は素晴らしい。派手な岩場は登山家の心をくすぐります。是非とも晴れた日に登って、その豪快な姿を目に刻んで欲しいと思います。

 

おわり