転がる五円玉 ~旅と城と山~

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小笠原旅行 その9・終 ~小笠原の別れは普通ではない。~

南島に上陸ツアーからへとへとの状態で宿に戻ってきました。既にチェックアウトしていますがシャワーだけ使わせていただきます(許可済)。

潮水を洗い落とすためにシャワーを浴びるのですが、一旦水を止めてる時も「シャワーーーーー」という音が外から聞こえてきます。

これはまさか……と思って外を見ると、スコールになっていました。

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写真だと全く伝わらないのですが、まさしくバケツをひっくり返したような勢い。正直言って茨城のゲリラ豪雨とはレベルが違います。思わず泡だらけの頭を雨に打たせてみると、思ったより頭が洗われていきます。

しかし「あと30秒も浴びれば十分だな」というタイミングで綺麗にスパッと止んでしまいました。残念。

 

まぁでも出発前に降らないで良かった。これはツイてる。

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小笠原最後の食事は島寿司にしました。

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ちなみに店名もそのまんま「島寿司」。8貫で800円です。相変わらず物価が高い……。

脂身の少ないマグロの赤身に酢がよく効いたシャリが合います。ガリが無限に進む系の寿司ですね。8貫という少なめの量も、これから船に乗るだけだと考えればむしろちょうどいいかも。

 

出港まであと1時間半。お土産を買いつつ大村をブラブラします。

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それにしても出航前だと言うのに静かな所です。

この「静けさ」は小笠原に行っている間ずっと感じていました。どこに行っても無音で、風や人や動物の音が時々聞こえるだけです。東京の駅のトイレでは鳥の鳴き声がスピーカーから流れていますが、小笠原の自然の音を流すのならほぼ無音になると思います。

ちなみに、同じ南国でも沖縄は小笠原より雑多であると感じます。沖縄の離島は人が作った石敢當や御嶽があって、住居があって、人の会話があって……そこから色々な音が出ているのです。

歴史がある沖縄と歴史がない小笠原、どちらも異なる魅力がありますが、静かで清浄で大自然に囲まれながら人々が暮らしている、という一般人が持つ離島のイメージに近いのは小笠原の方だと思います。

 

ただ、こういう雰囲気造りにはおがさわら丸が週一便しか無いという事が結構影響していると思うんですよね。島の利便性を考えると小笠原に空港も作るのもアリだと思うのですが、島の雰囲気の観点(もちろん自然保護の観点からも)ので空港は作らないで欲しい、というのがいち観光客としての意見です。

 

さて、時刻は既に14時15分を回りました。船は15時出港なので、そろそろ客船ターミナルで乗船を待ちましょう。

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14時30分頃に乗船開始。

今回も雑魚寝大部屋の2等船室なのでコンセント確保のため急いで船に乗ります。

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チケットに書かれた場所は1番下の階にある船室でした。デッキまだ遠くてツイてないなぁ、と思いきや、なんと7人分のスペースを2人で使えるようです。

これはこれで広々使えて良い!

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さて、さっさと荷物を置いてデッキに上がります。小笠原を離れる時に船室にいるのはあまりにもったいない。

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あー、でも既に港側のデッキは満員ですね。

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 仕方ないので上から撮影。大勢の方が見送りに出ていますが、普段に比べたら半分くらいのようです。

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色々な人が別れの声をかけ合っています。おそらくは東京に戻る島民の方でしょう。一介の観光客に過ぎない私は、そんな光景も旅先での景色として記憶します。

 

遂に15時になりました。ボォーという汽笛を鳴らしながらおがさわら丸は岸壁をゆっくり離れます。

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普通であればここで見送りが終わりですが、ここからが小笠原旅行のクライマックス。

 

様々なクルーザーによる見送り並走の時間です。

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どんどん速度を上げるおがさわら丸に追いすがるように幾隻もの船が並走してきます。

 

うーん、これは、ちょっと、いや結構感動するかも……。

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どこか旅先を離れる際に「いってらっしゃい」と声を掛けられる事は結構あります。でも、それはあくまで儀礼的な成句でこちらも儀礼的にに「また来ます」と言うだけの事でした。あくまで気まぐれに立ち寄った土地を離れるのに感傷的になる必要は無い、別れに涙を流すのは時間を経た人の特権であると私が考えているからです。

しかし、この小笠原の見送り並走は違いました。目の前いっぱいに船が広がってここまで盛大に別れを惜しまれると、本来は島民だけが感じる感傷的な雰囲気に一介の観光客ですら引きずりこまれるのです。まるでひと夏の冒険を終えて仲間たちに見送られるような雰囲気。実際には5日間のほほんと観光しただけですがね……。

 

1隻、また1隻と並走をやめていき、人が海にダイブしていきます。海に浮かぶ人をよく見るとみんな手を振っています。これは写真撮ってる場合じゃないと思い手を振り返しました。

そういう訳でブログ用の写真はありません。

 

気がつくと二見湾を出て並走する船もわずか数隻になりました。

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おぉ、出航から15分くらい経ったのにまだ1隻追っていますね。ここまで来ると乗客も「どこまで来るんだ……!?ザワザワ」といった感じの雰囲気に。

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しかし遂に最後の1隻もダイブしてその動きを止めました。

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さっきまで多くの船がいた海も、今はもう何もありません。最後の船を見送った瞬間に、小笠原旅行は完全に終了したのでした。

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船だといつまでも島が見えているので未練がましく色々な事を考えてしまいますねぇ、あそこは良かった、あっちは行けなかった、などと。小笠原にリピーターが多いのも納得です。

 

小笠原でこのような見送り文化が発達したのは、おがさわら丸が週1便しかない事情に加えて、小笠原の住民の年齢層が比較的若いことも要因だと思います。年寄ばかりだとこのような派手な見送りにはならないはず。それにやっぱり視覚的にもかなり壮大な光景でした。眼下の海に何隻も並走する光景をあなたは見たことありますか?私は見た事無かった。これは本当にものすごく凄い光景だった。

この見送り文化は最早一つの文化と言っていいと思います。願わくばいつまでも続いて欲しいですね。

 

さて、父島を出てから早1時間。あれだけ大勢いた乗客もすっかり船内に戻っていきました。

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私も船室に戻ってしばらくBSのグレートトラバースを観てゴロゴロします。広い船室最高〜。

 

飽きたので18時過ぎに再びデッキに出ました。

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雲一つない西空に夕陽が沈んでいきます。周囲は360°何もない太平洋。実に清々しい光景です。

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夕陽を見たのでレストランへ。からあげ定食1200円。からあげが結構な量があったので満足です。

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往路は夕食後すぐに寝たのですが、今回はさほど眠くないので引き続きBSでも眺めます。

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それにしても7人分のスペースを2人で使っているのでスペース的にじゃ快適そのもの。大の字になって全力でゴロゴロできます。もしここに7人全員いたら1回寝返りをうつくらいのスペースしか無い所でした。

21時頃にシャワーを浴びて22時に就寝。復路は往路よりも揺れが少なくて大変快適です。

 

朝8時頃に起床。やっぱり船は寝すぎちゃいますね〜。

外に出ると灰色の空と灰色の海が広がっていました。遠くに見える島はおそらく三宅島です。東京からすると三宅島も南の島という感じですが、小笠原からだと相当北に感じます(三重県とほぼ同じくらいの緯度のようです)。

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朝食兼昼食はペヤングにしました。そう、行きの船の朝食用で買ったけど結局食べそびれたあのペヤングです!流石に家まで持って帰るのはアホくさいのでここで食べました。ちなみに給湯器は廊下にあります。

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ペヤングを食べて再びBSを観てゴロゴロ。既に伊豆諸島の領域なのでデッキに出れば電波は入るのですが、デッキまで上がるのが面倒くさい……。まぁ普段の生活でここまで何もしなくていい時間はそうそう無いので無為な時間を満喫します。

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そのまま屍のようにダラダラしていると、東京・竹芝桟橋に到着したような感じになりました(窓が無いので船の動きでしか分からない)。

アナウンスがかかったので荷物をまとめて下船します。

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おー、東京だ……。この重々しい湿気に独特の埃っぽい空気、実に東京。

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東京に降り立って後ろを振り向くと合計48時間乗ったおがさわら丸

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有楽町まで歩くのがめんどうだったので、ゆりかもめで新橋まで行ってみました。

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所せましと商店が並び巨大なビルが立ち並ぶ新橋。小笠原の静かな町とは全然違います。このギャップも旅行の楽しみですよね……。

 

今回の旅行は海外旅行の代打として小笠原まで行った訳ですが、「海外の代わり」なんて表現するのがおこがましいくらい素晴らしい場所でした。片道24時間かかるアクセスの悪さもさることながら、タコノキのような見たことも無い奇怪な木、波の音だけが聞こえる静かな砂浜、空前絶後の美しさの南島、どれも日本の本土とはかけ離れた絶景ばかり。本当にどこ行っても絵になる奇跡的な場所でした。

 

旅行の〆で「是非また行きたい」と書くことは多いですが、小笠原は近い将来必ずまた行きます。

来年こそもっと平和に小笠原に行けるよう願って今回の旅行記は終わりとします。全9回ご覧いただきありがとうございました!

 

おわり