転がる五円玉 ~旅と城と山~

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真冬の青ヶ島旅行 Part1:あおがしま丸で上陸・大凸部へ

伊豆諸島最南端「青ヶ島」ーーー

日本に星の数ほどある島の中でも最も渡航が難しいといっても過言ではないでしょう。

交通手段はヘリコプターかフェリーのふたつ。ヘリは片道20分で運行率も高いですが、片道1万円もします。一方のフェリーは安いけれど時間はかかるし揺れるし、何より欠航率がものすごく高い。なんと6割近く欠航して、特に冬場は一週間まるまる船が出ないこともあるという。もはや出せる日に船を出す状態。

めちゃくちゃ興味深い島だけど、行くハードルもめちゃくちゃ高い。そんな島は学生の間に行くしかないでしょうよ。幸い修論も終わっているので、青ヶ島に行くことにしました。

青ヶ島渡航計画の立て方については別記事にて

 

交通手段ですが、とにかく金がないので行きも帰りもフェリー予定。社会人と違って時間に余裕があるので、家で翌日の天気予報を見つつタイミングを見計らって行くことにしました。

 

1月31日は、荒天。

2月1日は、好天だが海は荒れ模様。

2月2日は、昨日と同じく。

3日間とも荒れ模様でしたが、2月2日の朝に翌日の天気予報を見たところ……

2月3日……好天で海も若干穏やか

おおっ、これはチャンス!どうやら2月4日はまた荒れるようですし、行くならこの機会しかない。

早速2月2日夜に東京を出て2月3日朝に八丈島着のフェリーを予約します。上手くいけば、2月3日朝にあおがしま丸に乗り継げるはず。

実際にあおがしま丸が出るかどうかは2月3日朝7時にならないと分かりません。なので、これはもう一種の賭け。現地に行ってあおがしま丸が欠航になったら八丈島だけを観光して帰るつもり。

 

   賽は投げられた。いざ、青ヶ島へーーーー

 

毎度おなじみ竹芝桟橋。閑散としている客の中でも特に釣り人が目立ちます。

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淡々と乗船手続をして黄色い船体が特徴的な橘丸に乗船します。

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橘丸は2014年就役の比較的新しい船なので、2等和室でも隣との間に仕切りが設けられています。

が、この日はそんなもの関係なく8人分のスペースを占拠!!かーっ!他人がいないって最高だな!!!
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三宅島到着で起きたりしたものの6時間くらいは寝れました。

朝の7時過ぎに東海汽船の運行状況を見たら、あおがしま丸が「条件付き就航」になっていました。

 

フ、フ、フハハハーーwwww 「高波で欠航」「臨時が出なくて欠航」という賭けに勝った瞬間です。

 

BSニュースを観ていたらいつの間にか八丈島に到着しました。東京から10時間と中々の遠いですね。

風が微妙に暖かいです。微妙に、ですが。

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少ない乗客もすぐにどこかに行ってしまい港は閑散とした空気感です。青ヶ島行きのあおがしま丸は1時間後の9時30分出航です。乗り継ぎが考慮されているため、基本的には乗り遅れません。

青ヶ島行きの乗船券は3階建の船客待合室の一角で売られています。
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片道2760円です。船には2等和室しかありません。本当に青ヶ島に行くとなって思わず身震いしてきました。

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八丈島の底土港はテトラポットの生産拠点になっているせいかクレーンやタンクローリーが行き交い港というより工事現場のようです。沖合に停泊しているあおがしま丸が小さく見えていますね。
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それにしても待合室が閑散としています。こんなに大きい建物を作る意味はあったのだろうか。
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橘丸が東京へ引き返してから、あおがしま丸が入港してきます。この入港作業を間近で見ていたのですが、あおがしま丸の小ささに驚きました。排水量はわずが460トンです。橘丸の10分の1以下ですね。

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当然、客室も小さく、写真に写っている範囲しかありません。しかもこの日の乗客は私を含めて2名のみ!ローカル路線バスみたいです。こりゃとんでもない島だなぁ、と改めて思いました
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船内には一応甲板がありますが、あくまで一応です。1分もあれば船内全部周れるでしょう。
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出航しばらくは八丈島の影に隠れて波も比較的穏やかですが、島を離れた途端に揺れ始めました。立っていられないレベルだったので、大人しく船室に戻ります。幸いにも寝不足だったのですぐに昼寝できました。

 

2時間後に目が覚めました。先ほどより数段強く揺れています。なんとなくデッキに出ると、船の行き先に島影が見えていました。
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デ、デカい…。想像よりもだいぶ大きい…。

10分も眺めていたら島がどんどん近づいてきました。

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デ、デカい!!青ヶ島の面積自体は大きくはないものの、体積が大きいためか島全体から威圧感を感じます。サンゴ礁でできた平べったい沖縄の島々とは明らかに違います。

島の周囲も崖ばっかり。軍艦島もびっくりの無茶苦茶な形です。
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島が見えてから20分後くらいに島の南西にある三宝港に入港しました。入港と言っても港自体が外洋に突き出ているため波が高いままです。ほぼ止まりかけの船は激しく揺れており、普通に船酔いしました。オエ~~ッ

島の陸地がすぐそばに見えますが、陸地感がなく、コンクリの塊と言った印象です。
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3本のロープで無理矢理係留したものの、船は2m近く上下に揺れています。もしかして飛び降りるのか!?と思ったらタイミングを見計らってタラップが掛けられました。係員の「ハイ!行って!!」という掛け声と共に下船します。

 

下船して船の写真を撮っていると「邪魔なので早く上に上がってください!」との声が。この港は貨物第一優先ですね。青ヶ島の生命線ですし仕方ない。
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港の上の方に行くと駐在さんに話しかけられました。

「帰りのヘリは予約してある?」

「いや予約してないです!」

「えっ、そうなるとしばらく帰れないぞ。うーん、金はある?」

「一応6万は持っています」

「なら大丈夫か!」

う〜む……初っ端から不安になる会話です。船がしばらく出ない事は知ってはいますが、島民から直接言われると重みが違う。

 

ちなみに普通は予約した民宿の方に迎えに来てもらい、集落まで向かいますが、今回はキャンプをするので徒歩で行かねばなりません。しかし、偶然にも役場の方がいらっしゃったので、上の集落まで送って頂ける事になりました。

役場の方がいなかったら5km登り300mを徒歩で登る羽目になっていたので大変な幸運です。なお、この島で徒歩移動がいかに大変かはこの後嫌という程思い知らされます。

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役場の方の仕事が終わるまで港の上の方で待ちます。

噂には聞いていたもののこの港、すごい。港といえば波も穏やかで比較的のんびりした風情の場所が多いのですが、この三宝港は全くそんな事ありません。常に高波がドッパンドッパンと音を立てて打ち付けています。
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それにコンクリートの吹き付けがものすごいです。黒部ダムもかくやというような高所までガチガチに固められています。

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どうやってあそこまで工事したのか非常に興味深いですが、「国内屈指の秘境」のはずななのに初っ端からコンクリートジャングルとは恐れ入りました。

 

役場の方の用事が終わったので集落へ向かいます。2本のトンネルとかなりの急斜面を車でゴリゴリ登っていきます。
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正直この辺は船酔いが回復しておらずあまり覚えていませんwww

 

青ヶ島村役場に着きました。建物が小さい……。流石は日本最小の自治体です。
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役場でキャンプ場の使用受付をします。基本的は普通のキャンプ場ですが、飲み水はキャンプ場には通っていないので集落で汲んでから行くこと、との注意を受けました。

受付を済ませて自由行動開始。

取り敢えず島の最高所である大凸部に行くことにしました。

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集落の端から続く道をひたすら登っていきます。標高差150mくらいでしょうか。結構キツい。
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ヒーヒー喘ぎながら登ると突然視界が開けました。
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おぉ〜これはすごい。中々豪快な眺めです。島を縁取るように囲む外輪山と中央のカルデラの形が大変よく分かります。
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それにしても360度海ばっかりで島の他に何も見えません。絶海の孤島という言葉がぴったりに思えます。大海原にここまでダイナミックな形をした島がある「突然感」はこの地に降り立たないと体感できないと思います。とにかく異様です。

大凸部は標高400m以上あるため海はかなり下に見えます。この日は雲が適度にあって美しい風景になっていました。

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大凸部を降りて、東台所神社に向かいます。大凸部への登山道から分岐する形で参道が伸びているのですが、

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この参道が曲者だった。体感では垂直で、間違いなく斜度45度はあります。とても立って歩けず、四つん這いになって恐る恐る登っていきます。
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足元の玉石が崩れたら冗談ではなく滑落しますが、思いの外頑丈に設置されていて助かった。

で、参道を登ると社殿が現れます。薄汚れた朱塗りが独特の雰囲気を醸し出しており、長居をする雰囲気ではありません。
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取り敢えず手を合わせて先に行きます。東台所神社と尾山展望台はしっかりとした道で繋がれており容易にアクセス可能です。

 

尾山展望台からの眺めは大凸部とあまり変わりません。こちらの方が大凸部よりも集落からのアクセス道が整備されているので、夜に来るとしたらこっちでしょう。
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尾山展望台から集落までの道沿いには緑色のシートが敷かれている場所があります。「中国の緑化政策みたいなことやってるなぁ」と思いきや、これは”集水域”のようです。つまりこのシートで雨水を集めて濾過して水道水にしているのです。
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この集水域の下には貯水池と浄水場があります。

 

こちらは小中学校のグラウンドです。青ヶ島小中学校は小学校5人、中学校6人の計11人が在籍しています。11人の生徒に対する教職員数は27人であり、教員1人あたりの生徒数は驚異の0.4人です。正直羨ましい。
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校舎も鉄筋3階建てで超豪華です。これは教育機関と共に、住民の集会所としての役割もあるためです。まぁ、正直言って青ヶ島の光景ではかなり浮いている存在ではあります。

 

集落を横切ってヘリポートに向かいます。
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一日1本、朝にしかヘリは来ないので、この時間帯は閑散としています。よ〜く見るとAOGASHIMAとペイントされています。

ヘリポートの奥には金毘羅神社があります。金比羅様は海上交通の守り神なので青ヶ島にあることは当然ですね。
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この神社も東台所神社のように薄暗くておどろおどろしい雰囲気です。手を合わせてすぐに退散しました。

 

ヘリポートの北、青ヶ島最北端付近には笹原が広がっています。若干の平坦地になっており、そこは”ジョウマン共同牧場”になっています。
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牧場だけど牛がいないな?廃業したのかな?と思いきや牛舎の裏手に何頭か寝そべっていました。

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意外と大きい。

畜産は青ヶ島の伝統産業であり、牛祭りなるお祭りが年に一度開催されるようです。

 

 

こちらはジョウマン牧場に至る道にあるゴミ処理場です。そういえば離島のゴミ処理はどうなっているのでしょうか……?
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雲の多い1日でしたが、時々陽が差し込んで集落を照らしています。やっぱり学校(写真の右上)が目立ちますね。
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さて……ぼちぼちキャンプ場へ行かないといけない時間になってきました。

村に一軒だけある商店で水や食料を買い出します。お菓子から生鮮食品、焼酎や島の生産品もあるので、おみやげもここで買うことになります。
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集落から海を眺めると雲がどこまでも広がって幻想的な雰囲気になっています。素晴らしい開放感ですが、毎日見ていたら飽きそう……。
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さて、キャンプ場へ向けて歩きます。距離は3.6km、標高差は下りで200mもあります。
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島のメインストリートである都道を下っていきます。所々に「村内電話」があります。これは携帯の圏外で緊急事態が起こった時用のものでしょう。
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途中に「平成流し坂トンネル」があります。都道なのに素掘り吹き付けですか!

緑色の照明が独特の雰囲気を醸し出しています。FF7っぽい。
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トンネルを抜けて外輪山の内側に出ました。当然のようにコンクリートで崖が固められています。右は崖、左も崖のとんでもない道ですが、青ヶ島の道は大体こんな感じなのでそのうち慣れます。
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カルデラ内まで降りてきました。キャンプ場まであとちょっとです。ちなみに都道カルデラ内〜集落を結ぶ唯一の道なので交通量はそれなりにあります。
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日没20分前にキャンプ場に到着しました。急いでテント設営しますが……ペグがない!?

……どうやら家に忘れてきたようです。しょうがないので細引きを木と結んで無理矢理なんとかしました。
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適当に夕飯を作って適当に食べます。ソロキャンは自由度が高くてのんびりできるのがいいですね。
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飯も食ったし星を撮りましょう!

が、雲量が多くてろくな写真が撮れませんでした。晴れていれば良い写真になったと思うのですが、残念。
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つづく