転がる五円玉 ~旅と城と山~

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2019年ローマ旅行:ヴァチカン美術館 ~ラファエロの間とシスティーナ礼拝堂

うおおお!いざラファエロの間に突撃!……するのではなく、その前に「無原罪の御宿りの間」に入ります。

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画面中央にある小さな像が聖母マリアです。「無原罪の御宿り」とは、聖母マリアはその母アンナの胎内にいた時から特別に原罪を免れていたとする解釈です。「マリアはキリストの母だけどただの人間だよ」派も古代から根強くいたのですが、民衆の間で聖母マリア信仰は根強く、とうとう1854年に「無原罪の御宿り」は公式の教義になりました。この部屋はそれを記念して作られました。

部屋の壁が直線でないのは、他の部屋の様式と合わせたからでしょうか。19世紀に造られたにも関わらず、古っぽい印象を受けます。しかしアーチの装飾からは新しさを感じます。

 

さて、細い廊下を通り、いよいよラファエロの間に入ります。ラファエロの間」とは4つの部屋の総称です。この部屋に入る順番は時期によって変わるようです。

私はまずヘリオドロスの間に入りました。小学校の教室くらいの広さの部屋ですが、とにかく華やかな印象を受けます。これが教皇の私室ってマジか。

まず目に入ったのは「大教皇レオとアッティラの会談」

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整然と並んだローマ教皇(とその従者)と雑然としている蛮族の対比が分かりやすい。そして、上空にいる天使はその姿勢から「浮いている」感を存分に感じます。三角形の構図になっており、全体的に安定している印象です。

 


窓が大きく食い込んでいる壁には「ボルセーナのミサ」があります。

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窓枠が大きな十字架のようになっており、厳格な印象を受ける絵画です。

 

次に署名の間に入ります。急に人が多くなったなぁ、と思った3秒後には納得しました。ここは非常に有名なアテナイの学堂」があるのです。

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アテナイの学堂」は一枚の絵画ではなく部屋の壁の一部です(知らなかった……)。しかも、背景の建物の向こうが青空なので、部屋を拡張させたかのようになっています。

しかしやっぱり構図がいいですねぇ。シンプルで強力な遠近法が用いられており、自然と中央に視線が寄せられます。基本的に左右対称でありながらも、個々人が別々の行動をしているのも、古代ギリシア綺羅星のような学者たちを体現しているかのようです。あまり大きくない部屋に古代の叡智を結集したかのような印象を与えています。

人をかき分けて近づいてみました。黒板を前にして書物を書いているハゲたオッサンはピタゴラスです。

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布の柔らかい筆致からラファエロを感じます。遠くから見ても良し、近づいても良しの名画中の名画だと思います。

(ちなみに下の画像はサイゼリヤ取手店のアテナイの学堂です。端っこのアーチは絵ではなく、建物の部分だったのですね)

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1分ほど眺めてから次の部屋に行きます。次は「ボルゴ火災の間」です。この部屋の絵画は基本的にラファエロの弟子が製作しました。

この部屋には

カール大帝の戴冠」

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「ボルゴの火災」←これだけはラファエロが構図を作った。

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「オスティアの海戦」

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などの絵画があります。流石にこれだけ多いと説明が雑になったので、詳しくは「ラファエロの間 解説」で検索する事を強くおすすめします!

ラファエロの間の次にはボルジアの間や現代宗教美術の間がありますが、結構疲れてきたのでスルー。

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さて、次はいよいよシスティーナ礼拝堂に入ります。知っての通り、ミケランジェロが描いた壁絵最後の審判や天井画に彩られた世界でも例を見ない建築です。いや、建築というよりは作品と言った方が正しいかもしれません。

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ラファエロの間を出てシスティーナ礼拝堂と書かれた看板に従い進みます。細い通路をいくつか超えると、多勢の人が蠢く空間に出ました。

壁という壁が今にも動き出しそうな人の絵画で全くの隙間なく彩られています。すぐにシスティーナ礼拝堂だと分かりました。

感想を端的に言うと「思ったよりもすごい」ですね。もっと小さい部屋かと思いきや、300人くらいは余裕で入れそうなほど大きい。それに天井も高い。体育館くらいあるのではないでしょうか。その大きさの部屋が彩に溢れた宗教画で覆われています。

これは凄い。写真撮影禁止なので凄さが全く伝わらないのですが、とにかく凄いです。(ちなみに私語も禁止。)

脇にはベンチがあるので、そこに座って上を見上げるとここが建物の中だということを忘れます。いや、これは凄いな……。

10分ほど眺めてから礼拝堂を後にしました。本当にすごい所だった。

 

もうメインは終わったので後はゆっくりと出口に向かいます。その途中でバチカン図書館も通ります。

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色々な小物が展示されています。

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地球儀もありました。北海道が「YEZO」と記されていますね。

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ミュージアムショップもあるのですが、天井と壁の装飾が凄まじい。世界一豪華なミュージアムショップでは……。ちなみにトラヤヌスの胸像レプリカ(3000ユーロ)とか売ってました。

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ミュージアムショップを抜けると、再びピーニャの中庭に戻ってきました。いや~長かったなぁ。一周に3時間かかった模様です。日本から持ってきたカロリーメイトをベンチで食って休憩。

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しかし、ここで違和感に気が付きます。なにか見忘れた気がする……。なんだ……?

写真を見返して分かりました。ラファエロの間のコンスタンティヌスの間を見ていない!!

う~ん、迷います。是非とも見たいのですが、ここで見に行くと速足でも1時間はかかるでしょう。どうしよう。

と、5分ほど迷った挙句に行くことにしました。まぁ滅多に来れるところじゃないし、システィーナ礼拝堂ももう一回見て損はないほど偉大な絵画だし!

 

その御、地図のギャラリーなどを速足で駆け抜けて20分でラファエロの間まで着きました。ワクワクしながらコンスタンティヌスの間に入ると白い天幕がかかっています。ん?まさか、これは……。

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工事中やんけ!!!

 

うおおお……久々にガックリきます。コンスタンティヌスの寄進」だけがちらりと見えていますが、他は全く見えません。なんてこったい。ちなみにコンスタンティヌスの間の絵画はラファエロの弟子の作だったりします。

ちょっとガッカリしつつアテナイの学堂やシスティーナ礼拝堂をもう一度堪能して出口に行こうとすると、ピーニャの中庭ではなくサンピエトロ大聖堂の脇に出ました。ありゃ?どういうことなの?

 

もしかしたらもうすぐ閉館するので外に強制的に出されたのかもしれません。ちなみに午後2時半でした。(そして今になって絵画館を見忘れた事に気がつく。あぁ〜荒野の聖ヒエロニムスを見れなかった………。)

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ヴァチカン前の広場でようやく一息つけました。

 

いや~~~長かった!そして素晴らしかった!!ここまで凄いものを立て続けに見ると、なんだか常に幸福なような、「人類の未来は明るい!」と根拠なく言ってしまいそうな、訳もなくポジティブな気分になります。

宗教的情熱や作品の知識がなくとも、訪れるべきです。数百年もの間、人々を惹きつける芸術にはそもそもの強い素晴らしさ・引力があることを痛感しました。まぁ知識があった方が楽しめるのも事実ではある。

さて、まだ3月頭なので日が傾くのも早いです。テルミニ駅までゆったりと歩いて宿まで帰ろうと思います。

 

つづく

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