転がる五円玉 ~旅と城と山~

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2019年ローマ旅行:ヴァチカン美術館 ~ローマ皇帝彫像祭り~

大聖堂の次はヴァチカンのもう一つの観光地であるヴァチカン美術館へ行きます。歴代教皇がな蒐集した美術品を見させてもらいましょう。

この美術館は文字通り世界中から観光客が来るので夏場の恐竜博が如く死ぬほど混みます。そのためチケットには事前予約制も導入されており、それさえあればスムーズに入場できるのですが私は予約画面がよく分からなかったので書いませんでした。うーんズボラ!

ヴァチカン広場から城壁沿いに歩く事10分。列の最後尾に着きました。

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こりゃ確かに混んでるな……。と思ったその時、青いジャケットを着た黒人から話しかけられました。

「こんにちは。私は美術館の公式案内人です。列に並ばずに入れる公式チケットを販売しています。」

ほお……値段は?

「50ユーロです。」

ちなみに定価は21ユーロ。つまりこの人は予約チケットを確保しておき、並んでいる無予約者に売りつける転売屋ですね。確かに並ぶのはダルいし転売屋のチケットは本物だろうけど、高いので並んで待つ事にしました。

一見するときちんと刈り込んだ頭に青いジャケット、ローマ市章のバッヂまで身に付けているので本当に公式案内人だと勘違いするところでした。

 

案内人(転売屋)と会話して20分後、列はジリジリ進んで無事に入場できました。混雑時は3時間待つようなので運が良かった。思いの外近代的なエントランスを通り、入場料を払って中に入ると、松ぼっくりがある中庭に出ました。

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ここはピーニャ(松ぼっくり)の中庭です。この松ぼっくり古代ローマ製で鱗片から水が飛び出る噴水だったようです。なぜ松ぼっくりなのか・・・古代ローマ人の発想は時々訳が分からん。

さて、ここで一旦ヴァチカン美術館の地図を見てみます。

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この美術館は主要部の順路が完璧に定められており、一度流れに乗ると途中で降りる事も逆走もできない構造です。まずは長い順路とは別の行き止まりの展示室を見学します。


さて地図では左端にあるキアラモンティ美術館に来ました。見ての通り古代ギリシア・ローマの彫像の展示室です。
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どれもこれも精巧で人物を写実的に表現しています。すごいなぁ。

……すごいのですが、こういう場で同じような彫像を何体も見ているとそのうち流し見するようになりますよね。なんか全部同じに見えてきた。

と、思ったらなんか見覚えのある彫像がありました。

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ん……この眉毛が下がったオッサン見たことあるな。誰だ?

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「皇帝アントニウス・ピウスの肖像」

ア、アントニウス・ピウス!!?

アントニウス・ピウス帝……ローマ帝国の最盛期を担った五賢帝の四人目。大きな紛争の無い非常に安定した統治でパクス・ロマーナを現出させた。温厚篤実な性格で民衆からの信頼も篤かった。

びっくりすぎます。駅を歩いていたらキムタクを偶然見かけた感覚に近い。よく分からん彫像の中にローマ皇帝が紛れ込んでいたとは……。無味乾燥な彫像がいきなり威厳のある存在に見えてきました。

やはりここは世界有数の美術館です。注意してこの後も見ていきます。

 

ん・・・・・・この人もしや?

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ハドリアヌスやんけ!!

ハドリアヌス……五賢帝の三人目。政治・軍事・文化全てにおいて高い能力を持った名君。拡張一辺倒だったローマ帝国の方針を転換させ、現実的な統治路線を推し進めた。騎士階級の大胆な登用や法整備の改正を推し進めたため、旧来の支配層である元老院からは非常に嫌われていた。ギリシアの芸術と学術を愛したが、芸術家肌ゆえに気難しい性格だったという。

テルマエ・ロマエに出ているので日本でも有名である。

テルマエの映画では市村正親が演じていましたね。

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結構似ている……気がする。しかし、彫像をまじまじと見ると頬骨が出た特徴的な顔をしていますね。髭も立派で一言で言えばちょっと怖い。

次はこの実に偉そうな彫像です。
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これはティベリウス帝ですね……。そりゃ皇帝なんだから偉そうで当然ですな。

ティベリウス……ローマ帝国2代目皇帝。前帝アウグストゥスの路線を踏襲し、硬軟織り交ぜた対応でいくつもの外交問題を解決。国内でも治安の維持に力を注ぎ、ローマ帝国の国力を大きく上げる事に成功した。

が、潔癖な性格で俗世間との関わりを嫌がったので離島に隠遁してしまい、そこから指示を飛ばしていたので元老院・市民からは非常に嫌われていた。

いや~しかしこう見るとローマの彫像ってすごいですねぇ。2000年前の人物像なのに、そこにいるかのような生々しさを感じます。

 

キアラモンティ美術館は奥に「新廊下」という別の廊下があります。見るからに立派そうな彫像がたくさんあります。

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右側の像を見てると明らかに見覚えがある像がありました。これは有名ですね。
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プリマ・ポルタのアウグストゥス

アウグストゥス……いうまでもないローマ帝国初代皇帝。暗殺に倒れたカエサルの政治路線を踏襲し、皇帝を頂点とする統治体制を確立。傑出した政治力で軍事力の強化・インフラの整備を推し進め、ローマ帝国を完成させた。ローマでも大規模な公共事業を次々に推進し、「永遠の都・ローマ」を作り上げた。

 

世界で最も有名なローマ彫像ではないでしょうか。世界史の教科書や資料集に間違いなく乗っています。火の鳥ローマ編にも出ていますし、ローマ皇帝と言えばこの像でしょう。

もうこの像を見れただけで大変に感激しています。振り上げた腕や今にも歩きださんとする足元、斜め上を眺める視線など全てがアウグストゥスの偉大さを強調しています。

20分ほど眺め続けていましたが、流石に邪魔になったので次へ行きます。

 

次はこの像。おっさん臭い外見からウェスパシアヌスかと思ったのですが、違いました。
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ティトゥス帝です。ウェスパシアヌス帝の息子ですね。

ティトゥス……ネロより後、五賢帝より前の皇帝。とにかく市民の事を第一に考えて政治をしていたので、人気が高かった。ポンペイが壊滅したヴェスヴィオ火山の復興に取り組むが、その際に熱病で死んだ。在位はわずか2年。

善良な皇帝とされ、市民はその死を嘆いた。一方で、「治世が短ければ誰でも善い皇帝になれる」との声もあったとか。

髪や布の質感が絶妙な像です。アウグストゥス像ほどの精密さはないものの、逆に剛毅な雰囲気を受けます。アウグストゥスから80年ほど後の像なので、流行も代わるのでしょう。

胸像にも一流の物が集まっています。
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これはトラヤヌスです。非常に有名なので名前だけでも知っている人は多いと思います。

トラヤヌス……五賢帝の2番目。軍事的才能が抜群で、ローマ帝国の史上最大領土を実現した。史上初の地方出身皇帝でもある。とにかく国力が充実した時期で皇帝が

戦争がとにかく強かった皇帝なのですが、彫像からは柔和な印象を受けます。普通のオッサンのように見えますねぇ……。この人がローマの最大領土を実現させたというのが不思議な感じもします。

 

トラヤヌスの隣には威厳をたたえた胸像があります。
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この像はコンモドゥス帝です。剣闘大好き皇帝として映画「グラディエーター」に出ていたので比較的有名ですね。

コンモドゥス……五賢帝最後の皇帝の息子。有能でも無能でもなく、外交・内政共にある程度は安定していた。が、剣闘が好きすぎて自らが剣闘士として市民の前で殺し合いを演じる暴挙に出る。こうした行動が元老院から嫌われて暗殺された。

なお、剣闘士としての腕前は超一流で暗殺時には凄まじい抵抗を見せたという。

このような如何にも賢そうな顔をした人物が暗君になるのが不思議な所です。

 

さて、ローマ皇帝の像を見続けて早くも2時間経ちました。この調子で色々見ていると日が暮れてしまいますので、泣く泣く次へ向かいます。

 「ヴァチカン美術館をまともに見ると3日かかる」と言われており、まさかwwと思っていましたが、本当にそれくらいかかりそうです。いやはや凄い所だ……。

 

おわり

(今回の引用は全て筆者作です)