転がる五円玉 ~旅と城と山~

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2019年2月イスタンブール旅行記:アヤ・イリニ教会 ~イコノクラスムの夢の跡

モザイク博物館を出てトプカプ宮殿の入口へ。途中でアヤソフィアの裏手を通ります。

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いやしかし今日は本当に清々しく晴れていますねぇ……。ポカポカしており小春日和です。アヤソフィアの赤い壁に青空が映えており美しい。

 

トプカプ宮殿の入口前にはスルタンアフメト3世の泉があります。この建物はいわゆるロココ様式です。庇が妙な曲線を描いており優雅な雰囲気ですが、イスラムっぽくはありません。
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アフメト3世は西洋文化を積極的に取り入れた皇帝でした。この頃からオスマン帝国は西欧列強に押され始め衰退を始めていきます。西洋文化の「受容」かそれとも「侵食」か、については意見が分かれる所です。

庇を下から覗き込むとロココ様式である事が更に良くわかります。イスラム的な幾何学模様は鳴りを潜め、木材を使った複雑な装飾が施されています。
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でもタイルを使っているあたりはイスラムらしい。イスラム西洋文化が融合している後期オスマン建築の好例です。

 

泉の向こう側にトプカプ宮殿への門があります。城壁に組み込まれているので地味な雰囲気ですが、名前は「帝王の門」という非常にかっこいいですね。
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この門を潜ると木がぽつぽつ生える宮殿の庭園が広がっています。ここにはオスマン帝国時代も一般人が入れたようです。

庭園の西側にはアヤ・イリニ博物館があります。まずはここに入ってみます。
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古代ギリシアの神殿跡に建っており、アヤソフィアとほぼ同時期に建設された非常に伝統のある教会です。建物の下部はユスティニアヌス時代ですが、地震で損壊したため上部は8世紀半ばのコンスタンティヌス5世時代のものと考えられています。

この教会の特徴はモスクに改装されていないことです。これはオスマン帝国時代は武器庫として使われていたから。

イスタンブール第二の丘に建っているので、海の上からもその姿は眺められます。

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アヤソフィアの右横にポコッと見えています。

 

さて、狭い扉を潜って中へ。

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おぉ……思ったより広い!!奥から差し込む光が美しい。

高いドームとそれを支える太いアーチはカレンデルハネ・モスクを彷彿とさせます。煉瓦がつまれた壁が露出しており素朴で重厚な雰囲気です。

柱を見ると所々に十字架があります。他の教会では削られるか塗り込められていたのですが、モスクになっていないので残っていますね。

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一番奥のアプスには巨大な十字架があります。これは8世紀のイコノクラスム(聖像破壊運動)の特徴です。
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イコノクラスムとは8世紀のビザンツ帝国で巻き起こった聖像破壊運動です。時の皇帝レオン3世がモーセ十戒にある「偶像を作ってはならない」を根拠に、聖人が描かれたモザイクやイコンの破壊を命じました。

このため、教会を飾っていた華麗なモザイクは全て破壊され、このようなシンプルで重厚なモザイクばかりが作られるようになったのです(ちなみにイコノクラスム時代にはビザンツ帝国の領土外にだったラヴェンナには古代の華麗なモザイクが残っています。)

結局このイコノクラスムは民衆からの支持を得られず50年ほどで終結しました。

 

この教会は現在ではコンサートホールとして使われることもあるそうです。

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ちなみに窓にガラスは無く、天井付近では鳥が飛んでいます。上に架かっているネットは鳥の糞避けですね……。冷静に見渡すとあまり管理されておらず薄汚い印象もあります。

 

ドームの天辺には謎の絵が描かれています。
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槍とかスコップらしきものが見えるので、武器庫時代に描かれたものかもしれません。

 

壁には所々に過去の遺物と思われる石が使われています。この他にも細かい箇所で統一感が無いというか、ごちゃごちゃしている印象です。
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 他の教会やモスクも壁の漆喰を取り除くとこのような感じなのでしょう。

 

アヤ・イリニ博物館はやはり奥にある十字架のモザイクが印象的です。重厚な建物の奥に重厚な十字架があり、建物内は灰色が支配的で華美さは一切ありません。しかし、それゆえに建物が静謐で統一感が生まれています。イコノクラスム以降もシンプルな十字架が残されたのはそのためかもしれません。

トプカプ宮殿内にあるため、宮殿を訪れる際についでに見ても良いと思います。見学にはものの10分もかかりません。

 

さて、次はいよいよトプカプ宮殿の建物内に入ります。

 

つづく

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