転がる五円玉 ~旅と城と山~

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表面上はひたすら楽しかった北朝鮮旅行・・・その実は[旅行まとめ] 2016年8月

2016年8月11日~15日の5日間北朝鮮に旅行に行ってきましたので旅行の行き方、および感想を書きます。

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注意!:この記事はあくまで2016年8月現在の情報です。北朝鮮側は安全ですとしか絶対に言わないので、情勢が本当に大丈夫かどうかは自分自身で判断をして下さい。

 

Ⅰ:旅行計画について

①安く旅行するには(例えば丹東発着4泊5日で11万円)

北朝鮮はイメージ通りに世界でも屈指の閉鎖的な国です。観光をする際には当然ビザが必要です。

ただし、日本と北朝鮮の間には正式な国交がないので大使館でビザ取得という訳にはいきません。北朝鮮とのパイプがある旅行社経由で旅行を申請する必要があります。

そういった旅行社は当然日本にもありますが、大抵はツアー料金が非常に高いです。

そこで裏技として中国人向けの旅行を手配する旅行社に申し込む方法があります。「中国人向け」とはいえ、旅行社とのやりとりや現地のガイドはちゃんと日本語でできます。

 

中国の旅行社と聞いて不安に思う人がいるかもしれませんが、日本の旅行社との違いは基本的に日本発着か、中国発着かの違いだけです。

つまり、多少旅行慣れして中国までなら自力で行ける人なら中国から行ったほうが得なことが多いです。

また、交通費も全て込みのパックツアーを使うか、個人で希望を全て伝えてスケジューリングしてもらう、という二通りの方法があります。

パックツアーの場合は文字通り全て合わせた金額を旅行社に支払いますが、個人で組み立てる場合は金額の内訳を旅行社の人とすり合わせて金額を確定していきます。

今回の我々の内訳は

地上費:92000(4泊)

ビザ代:7000

丹東→平壌(鉄道硬座):9000

平壌→丹東:9000

ビザ送達費:7000

となりました。(地上費にはガイド代と宿泊費、食費などを含みます。)

 交通に関しては飛行機で往復しなくても、片道だけ鉄道、片道だけ硬臥のような柔軟な対応をしてもらえます。

 ただし、中国の旅行社では旅行社とのやりとりや旅費を中国の銀行経由(今回は中国建設銀行でした)で振り込むなどめんどくさい事も多いです。また、ビザは中国に着いてから受け取るので、時間が無い人には全くおすすめできません。

 

②飛行機か列車か

 北朝鮮と陸路で国境を接している国は中国・ロシア・韓国ですが、そのうち韓国とは国境を開いておらず、ロシアとの国境は外国人に開放していません。

 空路では北京やモスクワのほかにもクアラルンプールにも就航していますが、日本からの距離を考えると北京からが一般的でしょう。

つまり、日本人の旅行者はほぼ必ず中国から入国することになります。その際に陸路と空路を選択することができます。

  •  1:飛行機(高麗航空

    「世界一危険な航空会社」と有名な高麗航空は北京→平壌の便を飛ばしているので、時間が無い人は利用をおすすめします。日本発着のツアーでは大体飛行機利用です。同日中に平壌に着けるので便利だし、距離も長くないので超高い訳でもないです。

  •  2:鉄道                               北京~平壌に直通列車が走っているので、この便で行くこととになります。ただし、北京~平壌を通しで走る車両は軟臥の1両のみなので、より安い硬臥を使うには丹東から乗らなければなりません。

値段については

飛行機は片道4万、往復7万

鉄道は軟臥(平壌→丹東1.2万・北京2.4万)、硬臥(平壌→丹東0.9万)

となります。

一番安いのは丹東発着で往復0.9万×2=1.8万円です。

つまり、金はあるが時間が無い人は飛行機・時間はあるが金が無い人は鉄道利用がおすすめです。

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Ⅱ:現地での行動

①荷物検査

 双眼鏡・150mm以上のレンズ・北朝鮮の内容が書かれている本や反体制的な写真などは持ち込み禁止なので、入国審査時の際に「徹底的に」チェックされます。

 ただし、徹底的の度合いには係員ごとにかなり差があるのは事実です。禁制品の具体的な内容は多すぎて書ききれないので以下に私の実感を書きます。

1:写真よりも動画の方が厳しい

 動画はかなり詳しく、全て見ます。逆に写真や音声データはあまり厳しくありません。金日成などに関わる写真でなければわいせつ「写真」でも意外と見逃してくれますが(あってもその場で消せ程度の対応)、「動画」は厳しいです。

2:iOSは写真アプリしか見ない。

 写真アプリしか見ないので、それ以外のアプリには何を入れても見つかりません。

3:女性と男性がいる

 女性の係員もいます。ガイドさんにあげようとした鉛筆3本をなぜか取られましたが表面上は普通の雰囲気で荷物検査は進みました。

4:時間は一人当たり10分

 荷物検査は全て出したりしませんでした。バックパックには手をつっこんでガサガサして終了です。ただし、小カバンはひっくり返されました。荷物検査よりも電子機器の方が検査する時間は長いです。

 

 こんな感じでしょう。これはあくまで私個人の感想なので全面的に信用しないで下さい。なんだかんだ書きましたが、かなり神経質になるくらいがちょうどいいかもしれません。ちなみに作家のさくら剛さんはさらに別の方法でエロコンテンツを隠していたとさくら通信で述べていますので参考にしたい方は視聴してみて下さい。

 

②ガイドについて

 北朝鮮で外国人が旅行する際にはガイド(兼監視役)2人と専用車と運転手が必ず同行します。ガイドは必ず男女で日本語が堪能ですが、運転手は朝鮮語しか喋れません。日本人が1人でも30人でもガイドは2人です(おそらくガイド同士の相互監視が必要だからです)。

 また、朝鮮の男性はたいていタバコが大好きです。お土産には最適なのでセブンスターなどを買っていきましょう(刺激の強いタバコが好きなようです)。

 ガイドの日本語は非常に堪能(「なきにしもあらず」とか使ってくる)ので会話には全く不自由しません。ただし、ガイドさんも30歳以上がほとんどなので若者言葉は知らないようです。

 ガイドは監視役も兼務しているので基本的には逆らえません。ただ、要望を伝えるだけなら遠慮なく申し出ましょう。東南アジアらへんのへっぽこガイドとは違い、意外となんとかなる場面も多いです。腹痛を訴えると行き先のレストランにお粥を手配してくれたりしました。ただし、朝の遅刻には非常に厳しいです。

 また、かなり際どい質問にも答えてくれます。「拉致問題についてどう思うか」「核開発はアメリカだけではなく中国も反対しているがどう思うか」という質問も、あくまで1人の北朝鮮人として回答してくれます。1人の北朝鮮人風の模範回答をしていたのかもしれませんが。

 

③写真について

 想像よりはずっと緩かったです。軍人・建築中の建物は絶対に駄目で、それ以外にガイドの指示に従う。簡単に言えばガイドの言うことを聞けば何を撮ってもOKです。

  ただ、金ファミリーの肖像に関しては「全身を撮らなければいけない」「顔写真だけではだめ」のように暗黙の注意があります。

 

f:id:harimayatokubei:20160903213044j:plain←これなんかも「全身撮って」と言われます

 

④食事について

 朝食以外は朝鮮料理のみです。確実に言えることは、めっちゃおいしいです。冷麺・ビビンバ・焼肉etc・・・全ておいしかったです。f:id:harimayatokubei:20160827103114j:plain

↑朝鮮肉詰めとトウモロコシのチヂミ。一見すると不味そうだが驚くべきおいしさだった。

 ただ、キムチはなぜか日本の方がおいしかったですね。北朝鮮のキムチは水っぽいというか旨みがないんですよね。

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また、焼肉ではご飯はなぜか最後にやってきました。焼肉と白飯を一緒に食べる文化はないようですね・・・。

 

⑤現地出費

 出国前の振込みには現地の滞在費(ガイド代・交通費・食費・入場料等)は全て含まれているので現金を一切持っていなくともなんとかなります。ただ、

 お土産:一日に一回はお土産やに連れて行かれます。中国のように「買え!買え!」といわれることは無く、冷静にショッピングを楽しめます。値段もあまり高くありません。ちなみに博物館のパンフレットも有料でした。

 オプショナルツアー:事前にメールで要望を出していた以外の場所に行きたいと申し出ると大抵は追加料金がかかります。例:檀君陵は1000円。中を見ると1000円追加

 追加料理:ハマグリのガソリン焼き(1人1500円)と犬肉(1人3000円)は有料でした。勧められますが、払わなくとも大丈夫です。

 お土産とホテル内の商店は中国元で支払いましたが、オプショナルツアーと追加料理は日本円で支払えました。合計して2万円程度の現金を持っていけば不足は無いと思います。

 ※日本の税関でお土産が没収されることもあります。私は大丈夫でしたが、それは北朝鮮を出てから3日間ほど中国を観光していたからだと思われます。

⑥物価

 観光客が市内の物価を推し量ることは非常に困難です。観光に必要な物品(水や食事)は全て用意されるので財布を出す機会は上の3か所くらいしかありません。ガイド曰く「1ウォン=1円」らしく、少なくともホテル内の商店はその通りだと思われます。(500mlの水が80ウォンだったので)。

 しかし、スーパーに行くと1ウォン=1円では説明のつかない値段で商品が売られています。いくつかの商品の値段から考えると80ウォン=1円くらいが正しいのではないかと私は推測します。

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 ちなみにスーパーは撮影禁止で、会計はガイドが行い、ガイドがウォンから日本円に直した金額を払いました。これらのことを考えても実に怪しいです・・・北朝鮮当局は物価を隠したいようですね。

 観光客が自分の財布から金を出す場面は外国人専用ホテル(高麗ホテル)の商店か、外国人専用のお土産屋しかありませんので物価隠しは徹底しています。

 

⑦ホテル

 日本人は主に高麗ホテルに泊まることになります。客室の他にも本屋・商店・BAR・レストラン・カラオケ・プール・マッサージ・フィットネスなどなど施設は整っています。一昔前の日本のビジネスホテルと遜色ありません。

 ただ、部屋は絶妙にしょぼいです。部屋のテレビでは北朝鮮の番組の他にも、NHKワールドBBCCCTV(中国)・台湾国営放送・アルジャジーラが観れました。平壌でシリア内戦の状況を知ることができたのは中々シュールでした。

部屋に盗聴器があるという噂がありますが、少なくとも私たちでは確認はできません。部屋で「iPadにエロ動画入っていたぞぉ!!」と大声で言っても翌朝なにも言われなかったし大丈夫でしょう

 マジックミラーについては指をくっつけて判定しました。f:id:harimayatokubei:20160925015929j:plain←廊下の鏡

浴室内の鏡は大丈夫ですが、部屋内の大きい鏡と廊下の大きい鏡は微妙です、マジックミラーになっている可能性があります。部屋の寸法を測ったところ鏡の向こう側に2m×3mくらいの空間があることも判明しました・・・・・・まぁ気にするだけ無駄です。よっぽどの危険行為(勝手に外出など)をしなければ大丈夫です。

 ちなみに私たちが泊まった部屋は21階でしたが客室は34階まであります。好奇心で適当な階に行ったところ、フロアが真っ暗でかなりビビりました。客室の稼働率はあまり高くないようです。

 

⑧治安

 ガイドが常に付いており、ホテル外の自由行動は禁止されているので旅行者の安全は完璧に保たれています。心配する必要は全くありません。ちなみに、犯罪率などについてガイドに尋ねたところ「報道がないので良く分かりません・・・。」とのことでした。

f:id:harimayatokubei:20160925231612j:plain平壌中心部の地下鉄駅

 ただし、これはあくまで観光客が行ける場所の治安です。国家としての安定性などは私の考えが及ぶ所ではないのでご注意ください。

 

⑨パスポート

普通の国であれば出入国に際してスタンプが押されますが、北朝鮮では押されません。そのため、パスポート上には北朝鮮入国の痕跡は残りません。ただし、中国出国から入国までの3日間が不自然に空いている為、全く痕跡が無い訳ではありません。

ちなみに、お土産を日本の税関で没収されるとの情報もありますが、少なくとも私を含めて4人はそういった事はありませんでした。日本の税関では「中国旅行です!」と言っておくのが吉でしょう。まぁ、普通は聞かれることもありませんが。

 

Ⅲ:北朝鮮観光を終えて

 北朝鮮観光地としてはまちがいなく一級です。日本語堪能で心配りができる専属ガイドが付き、4人なのに移動は全て貸切バス、食事は全ておいしく、治安も最高で、ホテルは特級に泊まるので快適そのものでした。

 行く前のイメージでは国民の食事は完全配給制で自由に服も買えない、常に餓えていてやせ細っている、というイメージでしたが、平壌市民と郊外の住民に限って言えばそんなことはありません。若干センスが古いものの私生活については予想よりも豊かでした。道端でバスケに興じ、ビアガーデンで騒ぎまくる人民を見て私は不幸な人々だとは思いませんでした。

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農村部も家こそ貧相でしたが延々と拡がる田んぼは見事に実っており、飢えとは全く無縁な社会だと感じました。ただし、私たちが訪れたのはあくまで北朝鮮南東部の豊かな地域です。気候も厳しい北東部ではどういう状況なのかは知る由もありません。

 経済制裁の影響も感じました。石油は特に足りていないようで、地方ではアスファルトが足りないからコンクリートで無理やり舗装している道が多く、広大な田んぼも良く見たら農業機械ではなく手作業で植えてありました。トイレの紙も8割はわら半紙です。そんな状況でも軍事用に石油をまわすのが北朝鮮クオリティ。

 観光客になんとしてでも北朝鮮の貧しい部分を見せまいとする努力には軽く感動まで覚えました。お土産屋やレストラン以外では出来る限り一般市民と隔離されます。一番驚いたのは道を走っていると道沿いだけにアパートが建っていてその奥には昔ながらの家が立ち並んでいる光景でした。このような異様さ、印象操作はおそらく全世界でも北朝鮮でしか体感できないでしょう。

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 一方で、金ファミリーの絶大な権力の大きさについては私の予想以上でした。北朝鮮の巨大な建築物は全て金ファミリーの発案・設計・指導で建設されたようですし、国民はほぼ全員これを信じています。北朝鮮における金ファミリーは日本での首相というよりは平安時代天皇に近い存在です。

 様々な博物館や科学館、学校のように国民のために建てた建造物が非常に多い一方で、万寿台や太陽宮のように金ファミリーの威光を知らしめるためだけの場所もあります。特に太陽宮は国民が300万人餓死したと伝わる1990年代に金日成の遺体永久保存のために何十億もの巨費を投じて建設されました。国民の命よりも為政者の為に金を使うのは、日本人の感覚なら「国家としての道を外している」と感じるでしょう。

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 私が出会った北朝鮮の人々はガイドさんを含めて聡明で気配りができる、穏やかな雰囲気を持った、外国人としては日本人に最も近い存在だと断言できます。そのような人々が金ファミリーという国民の命をなんとも思わない為政者の下で、ウソの歴史を教えられ金ファミリーを尊敬(崇拝)しているという事実が私は非常に悲しかったです。

 一般的には観光でお金を落とすと現地経済が潤う、と言われていますが北朝鮮に限っては観光客が落とした金はほとんど金ファミリーか軍事費に回されます。もしかするとと日本の秋田沖に墜落したミサイルの一部は私の金で出来ているかもしれません。北朝鮮が日本にとっての脅威である以上は、日本人として北朝鮮に行くことは道義的に絶対に正しくないと断言できます。

 しかし、それでも旅行先としては非常にレベルが高い。なにより北朝鮮で見るものは冗談ではなく全てが興味深かったです。わずか三泊四日で11万円もしましたが、十分に元は取れたと思います。一回の渡航ではとても全部見きれないのでリピーターになる人が多いことも納得です。

 しかし、昨今はマレーシアとの関係も悪化するなど不安要素も数多くありますので、これから行く人は私を含めた様々な人が書いた北朝鮮旅行記をよく読んで決断することを強くおすすめします。

 

長くなりましたが以上で北朝鮮旅行のまとめは終了します。質問があればコメントからお願いします!